「目を覆いたくなるような」スイート・マイホーム nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
目を覆いたくなるような
冒頭から不穏感が半端ない映像で引き込まれました。
住宅展示場の人々の笑顔も怪しさ全開で、主人公一家はどうなってしまうのかと。
仲睦まじい主人公一家の日常に違和感が積み重なってゆき、何気ない場面でも異様な緊迫感を醸し出しているように感じました。
魚を焼いたりさばいたりしている場面、何だか妙に怖いですし。
刑事の喋りの間や佇まいなど妙な怪しさや気持ち悪さがありましたが、これはこれで面白かったですし、黒沢清監督っぽいテイストがあるような気もしました。
俳優陣の演技も素晴らしく、窪田正孝と蓮佛美沙子の朗らかな夫婦が戸惑いや恐怖に囚われてゆく様子もよく伝わります。
淡々と静かに不気味さを感じさせる演出も好感が持てます。
ストーリーとしては、終盤はうーん…と感じる部分もありましたが。
犯人が娘に危害を加えようとしたところを主人公の兄が助けに入ったらしいというのも、兄はどうしてそのタイミングが分かったのか?と。
主人公が出張ということを兄も知っており、察したということかなとも思われますが。
刑事が犯人の情報を教えるところも、そのタイミングで何故そんな中途半端に?
危険だと思うなら警護を付けるとか、主人公から思い当たる人物を聞き出して一緒に調べるとか、現場検証で気付かなかったのかとか。
この刑事の妙な雰囲気はなんなんだと思いつつも、嫌いではないですが。
刑事からの情報で犯人が分かってから、犯人が登場するまでも長いと感じてしまいましたし、あと、犯人が倒れている主人公にとどめを刺さずに包丁を落としておくとか、何で?と。
主人公は理想の家族の父として犯人にとっては必要ということなのか?犯人は何しに来たのか?
犯人像もそんなに意外性はないというか。
とは言え、ラストは色々と考えさせられます。
兄の死の真相なども結局は分からずじまいで、妻の事件への関与も疑ってしまうような。
子供の視線についても印象的でした。
目を覆う場面は、目を覆いたくなるような痛ましい出来事を示しているものと思いますが、目を覆っても子供は見ている、気付いている、現実を見ないようにしても現実を覆すことはできない、という意味合いにも感じ、主人公や犯人にも重ねられるような。
ストーリーとしては終盤微妙に感じるところもありましたが、淡々としながらも不穏さが際立つ語り口など、全体的に良かったと思います。