「壮大な物語の結末を見届けたという満足感」鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
壮大な物語の結末を見届けたという満足感
いよいよ公開となった完結編2部作の後編。鑑賞後の率直な感想としては、「うん、普通によかった」といったところです。前編を超えたかどうかというより、前編とあわせて壮大な物語に決着をつけたという点をまずは評価したいと思います。
ストーリーは、前編でグラトニーに飲み込まれ、なんとか脱出したエドが、ホムンクルスを生み出した、お父様と呼ばれる人物と会い、アメストリス国全体を巻き込む陰謀に気づき、仲間と協力してその阻止に挑むというもの。壮大な物語の最終章にふさわしく、エルリック兄弟はもちろん、マスタング、リン、スカー、イズミ、ブラッドレイ、ホーエンハイム、ホムンクルス等、物語に深く関わる人物を多数登場させ、アメストリスに仕掛けられた国土錬成陣というとんでもない計画の綿密さと恐ろしさを描いているところがいいです。
これら多数の人物を序盤からどんどん登場させ、その動向をテンポよく描きながら、水面下で推し進められた陰謀の全容を明らかにしていく展開に興味をそそられます。しかも、どのキャラもきちんと立っていて、それなりに見せ場も用意されていたのは好印象です。
後半は、各キャラがここまでにそれぞれの思惑で動いてきたことが伏線となり、最終決戦に収束していきます。原作未読で、テレビアニメ版を一度観ただけの自分には、正直言って理解が追いつかないところもありましたが、演者たちの熱量に押し切られた感じです。
映像的には、錬金術を用いたバトルを始め、アルの存在、エドの右腕、ホムンクルス、セントラルシティ、ブリッグズ要塞等、これまで同様CGやVFXがふんだんに使われており、もちろん見応えがあります。原作キャラに寄せた役者陣の特殊メイクや演技も申し分ありません。そんな中、ブリッグズ要塞に現れたスロウスだけは、バリバリの違和感を醸していましたが、あれはわざとなんでしょうか。けっこう気になってしまいました。
ただ、全体的に見ると、ストーリーに惹きつけられた前半に対して、後半はやや失速した印象でした。バトルシーンはあるのですが、イマイチ魅力的ではなく、なんならちょっと退屈してしまったぐらいです。それは、それぞれのキャラが大切にしたいものや熱い思いがあまり伝わってこなかったためです。この尺でよくぞここまでまとめたとは思いますが、やっぱり内容を盛り込みすぎたせいかもしれません。そのため、エドのバトルにも心を打たれなかったように思います。
主演は山田涼介くんで、本作のための肉体改造からも意気込みが伝わる熱演でした。脇を固めるのはこれまで同様の布陣で、豪華な顔ぶれが並びます。初参加の栗山千明さん演じるオリヴィエ・ミラ・アームストロングのハンパない再現率、内野聖陽さん演じるホーエンハイムのビジュアルと人物像等、すべてにおいて考え抜かれたキャスティングに脱帽です。加えて、本作では、何人もの俳優が二役を演じており、その演じ分けもお見事でした。
多少の不満はありますが、俳優陣の渾身の演技と日本の最新の映像技術で作り上げた、壮大な物語の結末を見届ける価値は、十分にあると思います。
こんにちは
感想が私とほぼ同じと感じました。
そうなんですよ。よくできてはいるんですが、バトルの辺りでは個々の目的が交錯し、大きな流れとなるべきですが、原作漫画もそのへんの作り込みが甘い感じです。でも、よくやっていますし、納得もします。
いい映画になったと思います。