劇場公開日 2022年9月9日

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「狂乱というよりも意外に閉塞感や悲哀を感じさせる一作」グッバイ・クルエル・ワールド yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0狂乱というよりも意外に閉塞感や悲哀を感じさせる一作

2022年9月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

予告編からは、うたい文句の通りの”狂乱”ぶりが漂ってきて、否が応でも期待が高まりました。実際の物語は、確かに銃弾は激しく行き交い、バイオレンス描写も盛りだくさんであるものの、組織や年長者にいいように使われる若い二人(宮沢氷魚と玉城ティナ)の悲哀っぷりが際立っていて、予想していたよりもウェットな内容でした。薄暗い屋内での陰影を効かせた画面が続いた後、急に映し出される青空と海の美しい光景は、地べたに這いずるようにして現金と血、猜疑心にまみれていく登場人物達の虚しさを際立たせていて、印象的です。

斎藤工が本作の「狂乱」の側面を一挙に引き受けてしまっているため、彼の出番がないところの描写がおとなしめになってしまうのは仕方ないところなのかな。もう一人、西島秀俊演じる安西の元舎弟を演じた奥野瑛太の振る舞いや眼光もなかなかの狂いっぷりで、西島秀俊が絶賛するのも納得でした。

無謀な強盗計画を企んだギャング団達の顛末、ということで鑑賞前は『現金に身体を張れ』(1956)や『レザボア・ドッグス』(1992)みたいな内容なのかな、と思っていましたが、無謀ゆえの自滅っぷりという点では、『キリング・ゾーイ』(1993)や『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)も連想しました。とにかく洋邦問わず、無数のバイオレンス映画を咀嚼して、一つの回答として提示した作品であることは間違いないでしょう。

バイオレンス描写は全体的に力か入っていて迫力も十分でしたが、ショットガンを乱射する場面では、あんなに撃つ方も撃たれる方も、何の反動もないものなのかな、と不思議に思いました。銃器に全然詳しくないので、これが正しい描写、と言われたらそれまでなんですが。

yui