「いい人は都合のいい人 神とは?」神は見返りを求める 梅★さんの映画レビュー(感想・評価)
いい人は都合のいい人 神とは?
この映画の第一印象は『青くて痛くて脆い』を極限まで胸糞悪くした感じ。女の子の髪型が似ているのがまたこれ。
作中のYouTuberは派手な格好をして暴れ回り再生数を稼ぐためなら他人に迷惑をかけることなどお構いなし。監督はYouTuberに恨みでもあるのかと思うくらい登場人物みんなクズ。
でも多かれ少なかれこの要素を持った人はたくさんいるのではないか。
いい人は舐められやすい。「情けは人の為ならず」という言葉があるが恩を返してくれる人は少ない。優しくするのには人を選ぶ必要がある。
ここらへんは私自身の実体験もあり胸が苦しくなる。
かと言って田母神が神というのも少し引っかかる。
田母神の転落のきっかけはゆりちゃんではなく借金の連帯保証人になったこと。
ギャンブル狂の後輩にお金を貸し、借金の保証人になることは、本当に後輩の将来を思ってやったことなのだろうか。
お金を渡してもすぐにギャンブルに使ってしまうことは目に見えているし、借金返済どころか借金を増やしてしまい余計に彼の立場を苦しくしてしまうと予想できなかったのだろうか。
親でも兄弟でもない田母神ができることはお金を渡すことではなく、医療機関への受診を進めること。そうしていれば、可能性は低いと思うが彼が命を落とすことは回避できたのではないか。
田母神は頼られることで自らの自尊心を満たす。満たされ続けるためには問題は解決せずに頼られ続ける必要があるのであえて問題を解決しようとしない。
そして、この借金の連帯保証人というのも恐らく碌でもない高利貸しから借りているのだろうから弁護士に相談すれば何か他に方法があったのではないか。
ゆりちゃんには見返りがどうのこうの言わず、借金の連帯保証人になって苦しいことと、いくらかお金を融通してもらえないかと相談すれば良かったのではないか。
田母神がゆりちゃんに執着し感情的になることで余計に事態はややこしくなる。
前述した『青くて痛くて脆い』は大学生のお話で、若さ故の青さでまだ救いがあるが、こちらはいい年をした中年。比較にならないほど痛い。思わず目をそらしたくなる。
でも、それが人間らしい。人は理屈通りには動かない感情の生き物だから。