劇場公開日 2022年6月24日

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「「愛の善意」という清流が「見返り」という泥流へと変貌する恐ろしさ」神は見返りを求める 甘酒さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「愛の善意」という清流が「見返り」という泥流へと変貌する恐ろしさ

2022年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

この作品は年代や立場によって捉え方が極端に違うと思う。
かなりのブラックだが、根本はめっちゃシンプルな事。
だから怖い。

仲良く動画制作をしている時は、本当に仲睦まじく愛に溢れた平和な世界。
なぜなら互いに“なんらかの利”があるからである。
ところがその関係のバランスが崩れだすと途端に平和だった世界は破滅し
ベクトルは自愛に向かっていく。

ある人は
『田母神さん可哀想』だし
『田母神さん自業自得』だし
『田母神さんキモい』
ある人は
『ゆりちゃん可哀想』だし
『ゆりちゃん自業自得』だし
『ゆりちゃんキモい』なのだ。

1つのストーリだが、全く両極端な意見があると思う。
ハッキリ言うと、それくらい人間は身勝手で利己的という事だ。

男には男の下心がありきで、
女には女の武器を振りかざす残酷な身勝手さありきなのである。
とは言え、それは恋愛や仕事など関係なく、
男女のパートナーというものにおいてはそれらが根底にあり
実際に互いに需要と供給で成り立っている。のかもしれない
それこそが吉田恵輔監督のラブストーリーだと思えば
甘く酸っぱいのも確かである。

必要とされなくなった時に、片方に愛があれば執拗になりがちで
それを固執と片付けてしまうのは、その片方にとってはあまりにも残酷。
だからこそ、それが「見返り」に変貌していく。
田母神の「愛の善意」という美しき清流が「見返り」という泥流に変わっていく様は、
あまりに自然な成り行きで恐ろしいほどだった。

結果、どっちもどっち。
誰かが誰かを利用して得がある世界では、
自分もいつしかその誰かになってしまいがちなのである。
だからこそ単純な「ありがとう」の言葉が全知全能の尊さを醸し出すのだろう。
何が悪で何が常識かを見失うことの愚かさや恐ろしさがリアル過ぎて
観終わった後に本当にゾッとした。

ムロツヨシさんの怪演∙∙∙さすがでした。

甘酒