劇場公開日 2022年6月24日

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「「神回」とか「神演技」とか「神対応」とか元々畏れ多い『神』という言葉を「人」レベルまで下げて使っちゃってる現代だから、“神様だって見返りを求める”でしょう。」神は見返りを求める もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「神回」とか「神演技」とか「神対応」とか元々畏れ多い『神』という言葉を「人」レベルまで下げて使っちゃってる現代だから、“神様だって見返りを求める”でしょう。

2022年6月26日
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鑑賞方法:映画館

①はじめはチャップリンの『ライムライト』現代バージョンか?と思うホンワカmoodで始まったのに、あれよあれよとド派手な泥仕合合戦に突入し、最後は喧嘩両成敗でジ・エンド。“おお、こういう方へ持っていくか”と話の先が読めない展開は確かに面白かった。初見の時限定の楽しみだけど。あと、人間の裏表・無自覚な悪意・醜さ・愚かさ・自己チューさ等々を確かにこれでもかと見てつけてくれるんだけど何か軽いんだよね(それが監督の意図であれば感服します)。②男と女とは基本的に思考回路が違うというのが私の持論ですが(あくまで持論で正論だと言い張るつもりはありません。これからは、ではクィア・ノンバイナリー・Xジェンダーの人達はどうなのか、という事も考えていかないと行けませんしね。)、ユリちゃんという子は元から示された好意には何らかの見返りをしないといけないと考えている子で(言動を見ればわかる)、頭から「見返りを求めない」好意というものなどあるとは信じていない子なので、1500円を初めて稼いだ時に「どういう風に分ける取り決めしましょう?」と訊いたら「ユリちゃんの稼いだお金だからユリちゃんの好きなようにすれば良いよ」と言われれば額面通りに受け取るわね、そりゃ。③僕も含め男ってええかっこししだから、ちょっと好意を抱いている可愛い女の子(元気のなかった頃のユリちゃんは確かに可愛いかった)に「ホントいい人ですね」なんて言われると舞い上がっちゃうし(お世辞でも)、分け前のことを言われた時にも「君の好きにしたら良いよ」なんて格好つけて言いがちだけど、田母神さんももう少し女性というものが分かっていたら、この時に現実的に取り分を決めておけば良かったのだ。後悔あとに立たずだけど。心の何処かで口先とは裏腹に“これからもそんなに売れないだろうから”と思っていたので分け前なんてどうでも良いや、と思っていたかもしれないし。まあ、売れて収入が増えたら増えたでユリちゃんは「あなた、分け前に見合うだけのことをやってないじゃん!」と約束を反古にするかもしれないけど。④個人的なことで恐縮ながら、40代の時に同じ職場の派遣の女子社員(20代)に、「女の子って親切にされたらどのくらいの間恩義を感じるものなの?」と訊いたら、「ん~、2~3日くらいですかね」と答えられて顎が外れかけた事がございました。⑤そういうlessonを受けていたのに、性懲りもなく50歳の時に違う部署で部下の女性に色々と親切にしてあげたのに今度はホントに恩を仇で返されました(部下からのパワハラってやつ?)。今から思うとあの時田母神さんみたいにブチキレたらよかった。まあ、会社でブチキレるわけにはいきませんしね。それで自分で抱え込んでメンタル(どうもこの表現好きじゃないな)になりましたが。冷静に考えれば100%自分が被害者ということでもなかったし、その女性に何らかの個人的感情(恋情とか、まあ下心?)とか感じていたら、仕返しとするとか「謝れ!」とか「お礼くらい言え!」とか行動に出たかも知れないけど、単に親切でしかなかったので後は“触らぬ神に祟りなし”で顔を合わせても挨拶程度で終わり。田母神さんがあんだけ仕返しにエネルギーを使ったということはそれに反比例する感情のエネルギーをユリちゃんに持っていたということでしょう。プライドが傷つけられたと感じたり彼処まで馬鹿にされたら、男ってプライドの生き物だから却って強がって自分から離れていくと思うので。⑥観ていると二人の泥仕合はだんだんカップルの痴話喧嘩に見えてきて、公園でスマホをつけたスティックでチャンバラし出す有り様はもう夫婦喧嘩みたい。⑦サイン会の時に田母神さんから「もう止めます」と言われた時に、普通なら“ああ、良かった。”と思ってそれで終わりの筈なのに性懲りもなく後を追いかけて「もうしないって本当?それでも私はあなたがキライ」。それに対して田母神さんも「僕も君がキライ」。この“キライ”って“キライキライも好きのうち”の“キライ”とそう変わらないと思う。二人が村上にいった“キライ”は本当の方の“嫌い”だと思います。⑧まるでバブルの頃みたいにピラミッド積みしたグラスにシャンパンを注いではしゃぐYouTuberたちのパーティーシーンでは、現代の日本ではここだけバブルなんだ、と思わせたり、ユリちゃんに大火傷を負わせた後の人気YouTuberの薄い対応を見ていると、SNSで繋がった人間関係なんてこんなものなんだ、と思わせる。監督は特にそれを一方的に非難・批判しているような演出ではないけれども。⑨ユリちゃんも自分で言っているように頭もそんなに良くなくてアイデアも良いものが湧いてこない。それは良いんだけど一番良くないのは自分で努力しない他力本願人間だということ。“出来る範囲で”って、出来る範囲でやってることを人は面白がらないし感動もしない、ちゅーの。常識的な判断力もないし(撮影禁止区域内で撮影しようとしたり生レバーを投稿したりスプレーを撒くなら風上から撒け!)、そこにプラス他力本願だから、あんな狭いランナウェイで両側で花火たいたら服に燃え移るだろうかとにも思い及ばない(火を舐めたらアカンよ)。だから、いつかは大やけどすると思ったけど本当に実際に大火傷を負ってしまった。自業自得ではあるが、顔を含め一生跡が残るかも知れないのがちょっと可哀相。ホントは生レバー事件の時に頭を打たせておけば良かったのに。しかし、あんなになるまで“ありがとう”が言えなかったのか、あんなになって初めて“ありがとう”が言えたのか。ユリちゃん本人だけが悪いのか、ユリちゃんを含めた周囲が悪いのか。考えてみるとちょっと可哀相。⑩田母神さんも又々ユリちゃんを守るつもりで盗撮(って言うのかな?)野郎を追い詰めたのは宜しいが(というかこんな奴病院に入れるなよ)、あんな危ない奴にあんな事(“一生怯えて暮らせ”)言ったらヤバい事になりそうなこと予想出来なかったのかね。そういう意味では自業自得。ただ、ユリちゃんから“ありがとう”の言葉が出て背中の傷も気にならないくらい嬉しかったのかな。同じ病院でユリちゃんと隣どおしのベッドにしてあげたらどうかしら。⑪自分の経験も含めてもっと泥々した人間関係(“男の嫉妬は真っ黒け”とか)を実生活で見てきたので(もっと重い映画もあったし)、私にはそれほど驚くほどの内容ではではなかったけれども、拗れた人間関係ではなかったけれども、どんなにねじれに捻れた関係でも其処で終わりじゃないよ、という意味を込めたラストシーンなのかな(最初はよう分からんかったけど)。

もーさん