劇場公開日 2022年6月24日

  • 予告編を見る

「ムロ、強し」神は見返りを求める サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ムロ、強し

2022年6月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

ムロツヨシ主演作品かつ吉田恵輔監督作品。
テーマはYouTuber。ジャンルはもちろんサスペンス。「見返り欲しさにやってる訳じゃないから」 \ バァァン / 〈神は見返りを求める〉という特報に心が鷲掴みにされ、すご〜く楽しみにしていた作品。人を笑わかせる天才と人を狂人に仕上げる天才の化学反応。ベイビー・ブローカーからの鑑賞だったが...こちらもえげつなかった笑笑 今年、「TITAN チタン」に並ぶ狂気作。もう唖然としてしまいました。

正直に言いますと、YouTube設立当初から今に至るまで、その名もない時からずーっとYouTuberを見ていたYouTube好きの私としては、違和感を覚える描写がたくさんありました。まず、そもそも底辺YouTuberでこんなにコメント来ません。言わなければ同僚にも友人にも知られることはまずないでしょうよ。ユーザーの数、とんでもないんですから。再生回数何十回と認知度、コメント量が全く釣り合ってない。怪盗ピンキーがプロデュースしたみたいですけど、なんでこの辺突っ込まなかったのかなーと思っちゃいました。

あと、こんなテレビみたいな編集する人っていなくね?って笑 芸能人のYouTubeはこんな感じだけど、HIKAKINだろうとはじめしゃちょーだろうともっと簡素ですよ。見ていて恥ずかしくて仕方ない。ちょっと芸能人扱いし過ぎかな。実際のところはYouTuberじゃないので分かりませんが、こんな風にプロデューサーがいて企画者がいてカメラマンがいて、みたいなYouTuberは私の知る限りでは見たことがないです。

とまぁ、YouTuberに関する不満はこの辺にしといて。肝心な中身ですけど、これはもう本当にとんでもなかった。人間のいや〜な部分をグロくえげつなく描くのが上手すぎる、この監督。結構誇張されて分かりやすくなってはいるけれども、人間の心理ってこんな感じで、ムロツヨシ演じる田母神の気持ちも、岸井ゆきの演じるゆりの気持ちも、どちらも十分理解できる。理解しがたい感じだけど、自分に置き換えてみてみれば「そう思うのは無理ないな」とか「だからといってそうも思っちゃうよな」ってのは感じちゃう。人間って気持ち悪い生き物だなと思わせられる映画です笑

正しいとは、当たり前とは、普通とは、一体どんな定義から生まれるものなのだろうか。それはいけないでしょとか、これはやるべきでしょとか、ああいうのが無難でしょとか。人間、誰一人として理解していない。というか出来ない。自分の気持ちがある限り。サイン会にやってきた1人の少女が言ったセリフが真理なのではと思ったのだが、理解しようとか深いこと考えるからいけないのかなって。楽しませたい!笑わせたい!だからこうしよう!なんで、この気持ちが失われてしまうんだろうね...。

ムロツヨシと岸井ゆきのの狂気的な演技が心臓を圧迫してこれ以上ない緊迫感を作り上げ、本当にキッツかったです。胸糞悪いし、全然心温まらないし、耐えがたかった。もう嫌だああ!!と何度思ったか分からない。とてもじゃないけど、人におすすめ出来るような作品ではないが、「ベイビー・ブローカー」以上に生きることの意義を考えさせられる作品でありました。

なんでこんなにグロいんだろうか。臓物えぐれたり、血が飛び散ったりするようなR15のヤクザ映画とかよりも、全然グロい。ホラーでもよく描かれるけど、結局いちばん怖いのは人間の心であって、欲望とか妬みとかがいちばん気持ち悪いんだなって。衝撃度で言えば今年トップクラス。レビュー上げた時は★3.5にしていましたけど、やはりこの気持ち悪さは一級品だなと思い★4.0に。一生忘れられない気がしました。

というのも、友人にこの映画について話していた時に、ものすごく熱く語ってしまい、それほどこの映画って魅力的なんだなと気付かされたんですよ。映画館で見るような作品ではありませんが、現代の問題がひとつに凝縮して皮肉られている作品でして、何度観てもとかじゃないけど、一度は見てこの恐ろしさと凄まじさを体感して欲しいとオススメしたくなる傑作なんです。

何度も言うように、ちょっと誇張されていてコメディっぽくなっている部分もありますが、とてつもなく狂気的でとてつもなくリアルな作品です。ああ、本当に苦しかった。キツかった。でも、めちゃくちゃ考えさせられた。オススメしずらいですけど、オススメです。

サプライズ
サプライズさんのコメント
2022年7月4日

コメントありがとうございます!
すごい監督ですよね...毎回心えぐられます。心のどこかで共感してしまうのがのが怖い。一生見たくないですけど、凄まじい映画でした。

サプライズ
iwaozさんのコメント
2022年7月4日

非常に共感です。f^_^;
「ヒメアノ〜ル」でもそうでしたが、本当にうまい役者を引っ捕まえて来て、本当に醜い人間の本性を拡大して見せてくれる吉田監督は、唯一無二ですよね。
なぜ後味悪く胸くそ悪くなるのか?
それは誰しもの心の中にある醜い感情を最悪ケースに置き換えてはあるけど、「あなたの中にもあるでしょう。こういう気持ち。」と見せつけられるからではないでしょうか?
認めたくないけどあります。(T . T)

iwaoz