「辛い、でも、がんばったね」アイ・アム まきもと yamappleさんの映画レビュー(感想・評価)
辛い、でも、がんばったね
阿部サダヲの好演が光るというか、彼しかできない役だった気がする。
牧本は不器用でしがないけどひたむきな役所のお見送り係。性格もやや暗く、空気は読めないがとても愚直、その意味で彼がこのポジションを1人任される理由は察しがつく。
故人の無縁仏となった人たちのために、自費で葬儀をあげるという優しさをもち、それぞれの故人の写真や記事を切り取り、ファイリングする真面目さ。
そこへやってきた超効率重視の上長から、「無駄が多い」と一蹴されるというのが、資本主義で生産性重視の世の中を体現していた。
彼の暮らしぶりはまた質素倹約で、必要なもの以外は何も持たない。食事も本当に必要なものだけを自炊で作り、食べる。これもまた、彼の愚直な性格を表している。
そんな彼が、お見送り係を廃止される直前に最後のミッションとなった蕪木という男の疎遠になった家族、旧友たちを繋げ、葬儀を素晴らしいものにしていく。
そんな中で、牧本は交通事故に遭い、あっさりと死んでしまう。「がんばった、頑張った」と呟きながら…。
牧本自身が無縁仏として弔われるのを見て、最後までなんというか救われない気持ちになったが、意外と牧本みたいな察しの悪い真面目な人っているんじゃないか?とも思った。非常に面倒くさいタイプだし、理解されづらいけれど、実は誰よりも人のために生きて亡くなっていった姿に、いま社会の価値観の中での使いやすさだけで人を判断してはいけないな、と思わされる作品だった。
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