「阿部サダヲの喜劇センスが暗い話をなごませる」アイ・アム まきもと 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
阿部サダヲの喜劇センスが暗い話をなごませる
阿部サダヲが演じる役所のおみおくり係・牧本は、無縁仏となった故人を埋葬するのが仕事だが、自腹で彼ら彼女らの葬儀をあげてとむらう。愚直なほどにきまじめで、空気が読めなかったり周囲に迷惑をかけたりする面もあるが、そんな牧本の言動を阿部がほどよい力の入れ加減(あるいは抜き加減)で演じて穏やかな笑いを促すことで、孤独死などの暗い話が続く本筋を適度になごませてくれる。
「聖なる愚者」というほど極端ではないにせよ、牧本のような善意の人が現実の世界にも目立たないながらあちこちにいて、社会的弱者やセーフティーネットの網目からこぼれ落ちてしまうような存在を助けているのだろうなと想像する。
水田伸生監督はテレビドラマ演出の方がキャリアが長く、今クールの「初恋の悪魔」も演出担当だった。「アイ・アム まきもと」のような抑え目で淡々とした演出より、ギミックも使ったケレン味ある映像演出のほうが得意な印象を受ける。
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