「熱量と迫力がすさまじい!ただ、実際の虐待動画を使ってる点は残念」彷徨う魂 にっきーさんの映画レビュー(感想・評価)
熱量と迫力がすさまじい!ただ、実際の虐待動画を使ってる点は残念
この映画は、事件が実際に起きた猫虐待事件を題材としており、かつ、監督自身が主人公のモデルと言うこともあり、迫力と熱量はすさまじいものがあった。
監督は実際に、公務員の妻と離婚し、猫虐待犯を襲撃する計画を立てている。(さすがに未遂に終わったようだが。)
ちなみに、この映画は実際にあった事件とフィクションを織り交ぜているが、肝心な部分が創作なので、そこは誘導されてはならない。
映画では「飼い猫を殺された復讐」というのが主軸だが、実際の事件では、北田監督の飼い猫は殺されていない。
というか、実際の事件で殺された猫はすべて野良猫であり、誰かの飼い猫が殺されたという事実はない。
そこは誤解してはならない。
つまり、監督は自分の猫を殺されたわけでもないのに、虐待犯を襲撃しようとしていた危険な人物なのだ。一歩間違えばテロリストである。
ほかにも、監督は、動物虐待者をしつこく尾行したり、盗撮して警察に警告されるような、いわゆる「過激派」に分類されるような人物である。ゆえに、この映画もさぞ「そっち側」に偏った作品なのだろうと当初は予測していた。
しかし見てみると、動物虐待犯の主張を紹介したり、動物嫌いの人物を登場させたりと、思ったよりもバランスが取れた内容だった。
ただ、マズイ点もあった。
映画においては実際に猫が虐待される映像が使用されているが、この点は非難に値する。
なぜなら、その映像を見て心を痛める人も多いだろうからだ。実際、この映画でも使用されている「猫虐待動画によって精神的苦痛を受けた」として集団訴訟が現在進行中である。
それほどショッキングな映像なのに、それを映画にしてフィクションと織り交ぜて放映するのはいかがなものだろうか。
しかも、実際の映像を使うということは、虐待映像の拡散や普及・宣伝に寄与していることにもなる。
模倣犯を生む原因にもなるし、動物虐待者を英雄視しているとも取れ、非常に危険である。
動物虐待がいかに残酷かを知ってもらうために実際の映像を使ったのかもしれないが、だとしてもそれは大きな間違いである。
なお、この映画では、「動物虐待は、人間への危害に至る「前兆」であるため、その芽を事前に摘んでおく必要がある」との主張が軸となっている。
しかし、この映画の主人公は、動物虐待犯が憎いあまり、自らが人間に危害を加えている。
人間への危害を防止するために動物虐待を根絶しようというのに、それでは本末転倒である。
バリバリの社会派映画の割には、そのあたりの理論がブレブレなのは残念であった。
完成度としては自主製作映画の域を出ないが、キャストをふんだんに使った思い切りの良さ、熱量の高さから、とても見ごたえのある作品だった。
実際の動物虐待の映像を使ったという失点を考慮して、評価は星3つとする。