「月のあるところ」月の満ち欠け aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
月のあるところ
満月の夜には何かが起きる。古来から人々に信じられてきたのには、それなりに理由があったのだろう。いわんや映画の中においてをや。
いろいろあって、気になっていたけど観てない映画の筆頭でしたが、公開から2ヶ月して、ようやくの鑑賞となりました。
まずは、まさかの高田馬場駅前。赤いBIGBOX懐かしい! 自分が高校生の時に(生活指導の先生に見つからない範囲で)ウロウロしていた思い出の地です。ゲームセンターとか、貸しレコード屋とか、ピザ食べ放題とか、かわいい寄り道でしたけど。
その街並みが画面に再現。走る車や通りの看板とか、古い形で目の前に。セットを作って撮影したようですが、大がかりで感激です。実際はもっと雑多な感じだった記憶だけれど、そこはファンタジー映画なので、それなりにということですかね。
さて、映画の中身は「赤いシリーズ」のような昭和のラブロマンスを令和に甦えらせて、大人のファンタジーを加えたような作品です。ツッコミどころはいろいろあれど、ファンタジー映画ですから、細かい事はどうでもいいわけです。
輪廻を素材に、宗教色や心霊色を出さないよう、あくまで悲恋を中心に描いた、少し変わったアプローチの話です。それもとことん優しく描いた作品でした。
演者も、大泉洋、柴咲コウ、有村架純、田中圭、伊藤沙梨、目黒蓮など、旬の人を揃えて豪華な布陣。そこにとてもいい話が加われば、まあ鉄板ですね。
物語良し、演者良し、テンポも悪くない。でも、その割にはいまひとつ乗り切れない感覚なのはなんでだろう。それぞれ深い、悲恋の話と家族の話を、両建てにした分、どちらも薄くなってしまって、両方とも満足感が低くなったかな。個人的にはもう少し、主役の小山内の感情を丁寧に描いた方が、全体に深みを増したように思います。ま、それでも中身は良いファンタジーです。観て損はないでしょう。
ラストシーンからの夢心地で、映画館からの帰り道。見上げればおぼろ月夜の満月が。ルナティックとはよく言ったもの。そろそろ何か起きそうです。