「近所で生まれ変わり過ぎ。駆け足過ぎ。」月の満ち欠け ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
近所で生まれ変わり過ぎ。駆け足過ぎ。
佐藤正午は好きなので、随分前に原作を買ったまま読んでないがこのようなものなのだろうか。にしても細部がまったく効いてない。ちょっと前に見た『母性』も細部が酷いと思ったら同じ廣木隆一監督で、なぜこの監督にこういったストーリーテリングが重要そうな作品がオファーされるのか不思議。
冒頭からずっと映画的な良さが殺されてるような芝居場が続くと思うと『こんな夜更けにバナナかよ』『そしてバトンは渡された』の脚本家なので面白いものを期待する方が間違っていた。いちいち設定の繋がりを「バカにも伝わるように」丁寧に答え合わせのように写していくのがダサい。せっかくジョンレノン流してもダサいものはダサい。もったいない。特に高田馬場の再現は頑張っているのにもったいない。生まれ変わりの話なので「まさか」というぞわぞわさせる必要がある設定も、出演者の「泣かせるお芝居」でそんなもの匂いもしないし、肝心の子役たちがの撮り方が学芸会を正面から捉えるのでシラケるのみ。唯一、有村架純は怪しい魅力を発揮していた。
にしても、もうちょっとミステリーを感じさせる方法はあるだろうに、と思う。さすがに生まれ変わりと交通事故が多発し過ぎるので、中盤以降はもはやサプライズでもなんでもなく、青森のこの町に宇宙からの怪光線が降り注いだのかとしか思えない。しかもふたつの交通事故でふたりの瑠璃を死に至らしめる田中圭のバカ単純な設定紹介はなんとかならなかったか。こいつも怪光線を浴びたのか鼻歌を聞いて「瑠璃…」と言うのは怪し過ぎ。伊藤沙莉の説明セリフのオンパレードもきつい。
と、設定ダイジェスト映画の見本のような映画だった。韓国とか中国でしっかりリメイクしてもらったらいいと思いました。