「with貞子」貞子DX 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
with貞子
ホラーアイコンからすっかりイロモノキャラに成り下がってしまった貞子だが、今回もまた。
って言うか、タイトルの時点で本格ホラーはまず期待出来ない。
だって、『さだこでらっくす』だよ。『オースティン・パワーズ:デラックス』かと思ったわ。
“DX”を冠して本当に“DX”なのはマツコ・デラックスくらい。まあ、DX級のおバカ作と言うのなら合ってるけど…。
そう、おバカ作。話がまさに。
貞子vsIQ200の天才ヒロイン。
一応呪いか科学かの構図なんだけど、もう“狙ってる”としか思えない設定。
あれを思い出した。『デスノート』。
巷で頻発する謎の不審死。貞子の呪い。これがデスノートを使った月の犯行。
天才ヒロインがその謎を解明する。これがL。
『デスノート』路線のスリリングな頭脳戦を真面目にやるならまだしも、それすら期待出来ない。だって、
もうこれ、完全にコメディ。すでに多くの方々が指摘してるけど、本当にマジコメディ。
ヒロインのツッコミみたいな台詞やあの仕草、
ビビリのナルシスト占い王子様のキャラ造形、
大音量の音や声で驚かそうとする『スクリーム』ばりのチープな演出、
『イット・フォローズ』みたいな呪われた者にしか貞子が見えない本来なら恐怖描写になるのに、それが“静岡のおじさん”になった時点で、ハイ笑ってちょうだいな。
って言うかこれって、感電ロイドさんの“一歩踏み出す”社会復帰ストーリー…?
…などなどなど。
爆笑とかではなく、ユル~い感じが『トリック』を彷彿。作風や演出やキャラや音楽や小ネタ集までも。
貞子のキャラで『デスノート』の構図にして『トリック』をやりたかった…?
そう考えると豪華コラボだけど、これが素晴らしいくらいにコケ滑りまくっている。
監督の木村ひさしは『トリック』のディレクターの一人。ああ、納得…。それに『屍人荘の殺人』の監督。ああ、納得…。
ちなみに“空飛ぶカメ”の怪獣映画は助監督してたんだって。ちょっとここだけテンション上がった。呪いのVHSと間違って、こっちのVHSテープ入れてくれたら良かったのに。
小芝風花を見る為なら満点。彼女の可愛さとコメディエンヌセンスで見る事が出来た。
まあ、胡散臭い霊媒師ケンシンが言う所のエンターテイメントか、おバカコメディとして見ればそれなりにギリ楽しめる。中田秀夫カムバックも完全不発だった前作の『貞子』や全ての元凶『貞子3D』に比べればまだ割り切って見れる。怖さは微塵も無いけど。
他にもツッコミ・難点・残念な点があり過ぎる。
勿論以前の『リング』との繋がりはナシ。都市伝説的に曖昧に触れられている程度。
VHSとか天然痘とかは引き継がれているけど、死までの猶予は24時間。一週間だった基本ルールはもうどうでもいいの…?
死の原因、それを回避せよ。二転三転するが、結局何がどうなったの…??
解明されてない謎も多々。IQ200が泣くよ…。
オチは意味不明。ついでにある意味、ハッピーエンド…?
世界がコロナ禍になってから最初の貞子。
今回の貞子にはうっすらコロナも被せられているような…。
酷けりゃ死に至るコロナウィルス。今もって完全な抑止力は無い。それと等しく、
死を招く貞子ウィルス。一度VHSを見てしまったら逃れる術はない。
では、どうすれば…?
共存しかない。
“withコロナ”ならぬまさかの“with貞子”…!?
本当にこの世には、科学や方程式で解けない謎がある。
この『さだこでらっくす』というおバカ映画がまさにそれ。