劇場公開日 2022年7月29日

「眩しくて見ることができない…、そんな輝く青春の物語。」今夜、世界からこの恋が消えても caduceusさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5眩しくて見ることができない…、そんな輝く青春の物語。

2022年7月31日
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今の世に不幸の種は満ち溢れている。
昨今の風潮も、不幸や絶望を描くと作品の深みが増すように考えられ、実際の価値以上に評価されているように思う。
幸福や希望は、そんなにうまくいかないだろうと考えられ、おめでたいという感じか、場合によってはお花畑と揶揄される。
ハッピーエンドの映画がカンヌでパルムドールを取ることは、まず考えられないだろう。
三木孝浩監督の映画は、常に人間の幸福感を描く。そして、人間の心の原風景を思い起こさせる。
そして、彼の映画を観ると、いつも幸せな気持ちになる。まるで、日だまりのような映画だ。
青臭いと言ってしまえば、青臭い。
幼稚と言ってしまえば、幼稚かもしれない。
だけど、誰しも、そんな気持ちを持っていたのではないだろうか。
もう忘れてしまったかもしれない。
持ちたくても、持てなかったかもしれない。
でも、心の底には、そんな青臭い気持ちが、誰しも横たわっていたのではないだろうか。
惜しいのは、透の死についてだ。あまりに唐突で違和感を感じてしまう。
若者が病気で突然死する確率は低い。それが記憶喪失と重なると、ちょっと安っぽい話になってしまう。お隣の国のドラマのようでもある。
原作はどのような話かはわからないが、ここは何らかの前振りや描写が必要だったのではないだろうか。
また、交通事故と子供を助けた話も描写が必要だっただろう。これも設定がないとストーリーが薄っぺらくなってしまう。
ともあれ、映像は美しく、光とやわらかな影とが真織と透の姿を映し出す。
ぜひ、劇場でご覧ください。

caduceus