キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性のレビュー・感想・評価
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女性の前に立ちふさがったのはあのベテラン監督!?
キャスティング・ディレクターという職業についてのドキュメンタリーだが、同時にマリオン・ドハティという先駆者的存在を中心に据えて、ハリウッドで苦闘してきた女性たちの歴史を描いた作品でもある。最近では『ゴッドファーザー』製作の舞台裏を描いたドラマ「ジ・オファー」でもキャスティング担当として女性キャラが登場していたが、彼女がどんな背景を背負って仕事をしていたのかもより理解できる気がする。
恥ずかしながらドハティのキャリアについても、キャスティングという仕事の成り立ちについても知識はほとんどなく、学ぶことばかり。「いい映画がどうやってできるのか?」という命題についてはよく頭をよぎる。監督だけの功績ではないことはあきらかだし、役者ひとりが作品を背負っているように見えることもあるが、それは氷山の一角ににすぎない。いまだにアカデミー賞の部門が設立されていないキャスティング部門がどれだけ必要不可欠な役職かを知ることができて良かったし、その地位向上を阻む男優位社会を象徴するのが、この映画の製作当時、全米監督協会の会長だったテイラー・ハックフォードっていうのも、今後の印象が変わりそう。
配役は監督が決めるのか?キャスティング・ディレクターが決めるのか?
かつてのハリウッドでは、どの俳優をどの役に割り振るかは見た目で決まっていた。善良な市民ならそれなりの風貌をした人、アウトローもそう、悪役もそうだった。だから、その俳優は死ぬまで善人か悪役で通すしかなかったのだ。
そんな乱暴なキャスティング・システムに風穴を開けた革命的なキャスティング・ディレクター、マリオン・ドハティの仕事にスポットを当てたドキュメンタリー映画は、ドハティが見た目に関係なく、例えば正反対のルックスを持った俳優たちを候補リストに並べて、俳優の個性と演技によってその役がいかようにも広がることを監督に提案し続けたプロセスを追う。彼女の恩恵に与ったスコセッシやデニーロやウディ・アレンやイーストウッドがその仕事ぶりを讃えるのを見ると、近代のハリウッド映画はドハティ抜きでは語れないと思うくらいだ。
問題は、そんな重要な仕事に対して、アカデミー賞はキャスティング部門を設けていないこと。撮影監督も美術監督もあるのに。これには理由があって、今も配役は監督がやるものだと断言する監督たちがいるからだ。さて、あなたはどう思うか?
ハリウッド映画を、アカデミー賞の矛盾を散々議論してきた映画ファンも見落としていた論点を提示してくれたという意味で、これは跨いでは通れない問題作だ。
キャスティングの仕事を通じて、アメリカ映画の歴史を学べる一本
「キャスティング・ディレクター」という職業の草分け的存在、マリオン・ドハティやリン・スタルスマスターなど、北米で活躍するキャスティングの名人たちに迫ったドキュメンタリー。ハリウッドだけじゃない、ニューヨークも含めたアメリカ映画の歴史が学べます。あと、映画監督とそれ以外の制作スタッフの関係性とか、いろいろ勉強になった。そして、「卒業」とか「真夜中のカーボーイ」とか、見直したくなりました。スコッセッシとかイーストウッドとか、名監督の陰に名キャスティング・ディレクターありです。
一言「映画好きには、たまらない!」
戦後〜1990年代までの約50年間。
NYそしてハリウッドで活躍した、キャスティング・ディレクターのドキュメンタリー。
日本語で言うと「配役」かな。
その活躍・才能ぶりがよくわかるシーン。
メル・ギブソン&ダニー・グローバー「リーサル・ウエポン」。
二人のはまり役ですが。
脚本では、グローバー役の「肌の色」には全く触れていなく。
監督がマリオンに「なぜ黒人なの?」→「黒人だから何?」。
舞台やドラマで新しい才能をにつけて、キャスティングするマリオン。
トラボルタからイーストウッドまで。
実にいろんな俳優の「オーディション」「新人」「今では名作」が出てきて。
89分の中にみっちり。お腹いっぱい。
あの時代の映画たちの側面を、堪能してください(「スティング」好きには是非)。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「(マリオンの)信頼から、なんでもやれる自信がついた」
キャスティングディレクター事始め。
3月までNHKテレビで放映していた朝の連続ドラマ「カムカムエヴリバディ」の初代主人公(森山良子)の今の仕事が、キャスティングディレクターだった。まだ、日本人には馴染みがない仕事だ。
既存の芸術(文学・絵画)は創作者の単独の仕事だが、オペラや映画は共同作業だ。関わる人数は映画の方が多いだろうだろう。それにビジネスが絡んでくるので、なおさらややこしい。私見だが、音楽及びオペラが、最高の芸術表現と私は考えている。映画がそれに次ぐ。
映画の良し悪しは、「脚本」で決まると言われていふ。この映画をみると、次は「演出」ではなく「配役」だと教えてくれる。日本でも採用されるかもしれない。私が心配するのは、アメリカのように多民族が暮らし、人種も混在し、移民が流入する人材豊富なのに比べると、日本はほぼ単一民族で、人口減少している。人材がそこをついたら、日本の前途は暗い。そうならないことを祈る。
東京では春に公開されたが、名古屋では9月に入って上映された。勉強になる映画だった。
《映画界の人事部》で働く人達にスポットを当てた作品
数ある俳優の中から最適な人材を選び、監督に提案するという所謂《映画界の人事部》とも言うべき仕事を行う人々。なおキャスティングディレクターという名前は監督組合からNGを食らっているらしく、エンドロールに出てくる時も『キャスティング』という呼称に留まっている様子。ただ、彼らが見出した才能はアル・パチーノやデニーロ、トラボルタ等スターばかり。一緒に仕事をした監督についても、スコセッシやウディ・アレン(残念ながら彼に関しては昨今醜聞ばかり耳にしますが…)など錚々たるメンバーばかり。
何故、彼らに脚光が当たることがないのか。
何故、彼らの仕事が知る人ぞ知る状況に留まっているのか。
いろいろと考えさせられました。
今年ベストに入る作品。
映画業界自体の変遷も見られるので、そっか、ハリウッドの映画がつまらなくなったのはこの辺からかとか、2000年代になっても肌の色の違いが取り沙汰されていたのかとか、いろいろ勉強にもなる。
最近の映画ではどうやってキャストさんを決めているんだろう?出てきた映画も俳優さんも2010年以降の話はほとんど出なかったため、そのあたりが気になった。
邦題を付けるのは難しかっただろう。
「キャスティング『ディレクター』はアカデミー賞を取れない」とかに邦題をしないと、この映画の意図が伝わらないと思った。キャスティング担当者に「ディレクター」と呼ばせることを頑なに認めない「監督集団」のことを明らかにしたドキュメンタリーとして勉強になった。それにしても、ニューヨーク派の快進撃、アメリカンニューシネマの成り立ちを見られたのは面白かった。作家性を排除して利益重視の産業化を進めているハリウッド大作主義のカウンターとしてネットフリックスたちが台頭してきたことを面白く思う。歴史を学ぶことの大切さを実感する。
“内”を見つめよ
影の功労者であるキャスティング・ディレクターについてマリオン・ドハティを中心にその功績を紹介するドキュメンタリー。アメリカ映画界におけるキャスティング・ディレクターの歴史をやや駆け足だが知ることができる。
「監督(ディレクター)」という地位と肩書きにこだわるあまり、「キャスティング・ディレクター」とクレジットするなと警告したり、決定権はディレクターにあるのだから(と主張する)、キャスティング賞など不要だと言い張る某監督協会にアメリカ映画界の闇をみた。決定権があるからこそ作品づくりをアシストしてくれる仲間を労わるべきではないのかと個人的には言ってやりたい。しかし言ったところで笑顔で屁理屈かますんでしょうな。このインタビューのように。
マリオン・ドハティの事務所の守りが堅いがために、郵便局員のフリして事務所に乗り込んだ某俳優のエピソードに笑ってしまった。しかもご丁寧に小細工(書留を自分宛に送って、戻ってきた書留の宛先をマリオン・ドハティの事務所宛に書き換える)まで準備する周到さ。
悪知恵すぎるけど人間味を感じるエピソードでした。
知られざるキャスティングの世界
2012年の映画だったのか。面白かった。あの名作や、あのスターの活躍の裏にもマリオン・ドハティ(などキャスティング・ディレクター)の素晴らしい仕事があったって次々に事例が出てくるので静かに興奮する。キャスティングのためにロケ予定地に1年滞在することもあるって、すごい仕事だ。
ドハティはハリウッドに移る前、ニューヨークに事務所を構えていたということで、そのビルの様子がまたかっこよくて。「お荷物のお届けです」って俳優が嘘ついて入り込む話も面白かったなあ。
監督協会だか連盟だかの人が「ディレクター(監督)と呼ぶな」「撮影監督だって気に入らないのに」みたいなことを言っていたのは笑った。むしろ、そんな器の小さいこと言う人を監督と呼んでいいのかね。
インタビューで映画に登場したのは57人、カットされた分も合わせると240人だそう。ロバート・デ・ニーロやアル・パチーノやもう錚々たるメンツが応えている。それだけ、みんな彼女らの仕事を認め、感謝しているってことなんだろう。
この映画を観てから、エンドロールに「CASTING」のクレジットを探すという新習慣ができた。ちなみにファンタビ新作にもちゃんと単独でフィオナ・ウィアーがクレジットされていた。
凄く興味深い仕事。
NYとLAを基点にキャスティングという仕事がいかに重要か、そしてそれを認めない勢力の存在、を先駆者マリオン ドハティを中心にアメリカの映画史とともに説明する映画です。映画映像への愛、役者への興味とその可能性への想像力、原作脚本の深い読み込みがキャスティングという仕事を価値の高い物にしている。
日本にも同じ仕事はあるんだけど端役のキャスティングが主でなかなかこのレベルに辿り着けない。日本は事務所の力が強かったり、タレントありきで企画を進めるケースが多いからだと思う。なかなかキャスティングディレクターの才能が形になって見えて来ないのは残念な事だ(映画を見るとわかるがハリウッドでもそういう時期があったようだ)。
優秀なキャスティングが力を発揮した仕事の紹介が凄い。監督が語るキャスティングのおかげで作品の質がジャンプUPした事例。有名俳優達が無名時代キャスティングのおかげでいかにビッグチャンスを掴んだかと言う事例が凄い説得力あった。
映画作りにおいて監督が最終決定権を持っている訳だが(大作の場合、映画会社や出資者の意向も反映されるので監督が決められない事も多い)共同作業、チームワークの利点として上手く優秀なキャスティングと組んでいると作品の質が上がる事は明白なのにもかかわらず、実は古い監督達がキャスティングという仕事を認めていないという事実も面白い。
最後の監督、俳優達の謝辞でほろっときた。
キャスティングに創造性を与えたマリオン・ドハティという女性のドキュメンタリー。
映画が好きな人が観れば、とても興味深いドキュメンタリーではないだろうか。
俳優をリストから選ぶだけだったキャスティングという仕事に、マリオン・ドハティという女性が創造性を与えた。
最終的にキャストを選ぶのは監督だが、彼女が、それまでの映画業界にはない感性で、役に見合う俳優を誕生させていった。
実際には、ハリウッド作品の傑作を創り出した影の立役者ということだろう。
クレジットに、キャスティング・ディレクターとして名前を入れようとしたり、アカデミー賞にキャスティング賞をつくろうとしたり、いろいろな試みはあったようだが、監督協会の反対があり、実現しなかったようだ。
裏方の仕事なので、スポットライトを当てることができるのかは、わからない。
しかし、こうしてドキュメンタリー映画がつくられるということは、マリオン・ドハティを讃えたいという監督や俳優が、たくさんいるということだろう。
すでに故人となっているマリオン・ドハティという女性は、ハリウッドの映画人の記憶の中に生き続ける。
ぜひ劇場でご覧ください。
配役の重要性を改めて理解した
映画のエンドロールに、洋画なら「Casting」邦画なら「配役」という役割が出ることがある。これまでは何も考えずに、ただ茫然と眺めているだけであった。配役をさして重要な役割だとは考えていなかったのである。大抵がオーディションで決められるか、脚本家が当て書きをするか、業界の力関係で決められるものだと思っていた。
しかし考えてみれば、すべての作品でオーディションが行なわれる訳ではないし、当て書きをされるのは極く一部の俳優である。芸能事務所や制作会社が決めるといっても、たくさんの作品製作をすべて網羅しているわけではないだろう。
ということは、配役担当者がそれぞれの役に相応しいと考える俳優を用意する訳で、交渉の段階で業界の力関係がはたらく。配役担当者の力と業界の力のパワーゲームになることもあるのだろう。
本作品では、かつては優秀な配役担当者がいて、映画の配役を任されていたことが紹介されている。配役によっては作品を台無しにすることもあるし、逆に配役によって役者同士のダイナミズムが生まれて作品が俄然、輝くこともあった。
特に本作品で中心的に扱われているマリオン・ドーハティは、すべての現役俳優について、長所、短所、特記事項を熟知している上に、様々な劇場を巡って未知の才能を発掘したりもしていた。業界は彼女の実力を知って尊敬し、主張が対立したときは彼女の意見が尊重された。
しかし映画が商業主義に飲み込まれて芸術としての独立性を失うと、配役担当者もその地位を失ってしまった。業界の力に押されて、独自の配役を通すことができなくなってしまったのである。そうなると芸能事務所のエージェントが仕事をさせたい役者、売り出したい役者を配役することになり、作品のことは二の次になる。役者同士のダイナミズムなんて誰も考えないから、作品が輝くこともない。
ハリウッドのB級映画がつまらないのは配役も一因だったのかと、配役の重要性を改めて理解した。先日鑑賞した「TITAN」が無名の女優を使って成功していたように、ドーハティのような天才的な配役担当者が、その力を存分に発揮する日が戻ってくれば、ハリウッド映画も芸術性を取り戻せるかもしれない。でなければハリウッドの映画はいつまでもB級のままである。
キャスティングって映画制作においてかなり重要だと思うのですが、今ひ...
キャスティングって映画制作においてかなり重要だと思うのですが、今ひとつその過程がわからなかったり、謎な部分も多い。その理由がこの映画を観るとわかるような気がします。先駆者の功績はホントに大きい。
キャスティングディレクターの奈良橋陽子さんのトークショー付き上映でしたが、奈良橋さんのお話もとてもよかったです。
あの名作の影にこの人あり、映画史を塗り替えた知られざる偉人にまつわる無数の逸話が賛辞と共に語られる感動のドキュメンタリー
数多のスター、監督、プロデューサー、そして第一線で活躍するキャスティングディレクター達が語るマリオンの業績、数多の名作のキャスティング秘話がバカみたいに眩しい。しかしそんな栄光の前には無数の屈辱がありそれは今においても綿々と続いている。特に全米監督組合との確執に滲む嫉妬と不寛容は先日のオスカー授賞式の裏でもまだ沸々と煮えたぎっていることには閉口しました。しかしキャスティングが映画史を華麗に彩ったことは紛れもない事実。次から次へと語られる賛辞を聞きながら涙が溢れました。60年代以降の映画史をリアルタイムで観てきた世代にとって矢継ぎ早にパズルのピースが軽快に嵌っていく様を眺めているのは至福としか言いようがなく、半世紀近く映画を愛してきた自身の魂が洗われた気がします。若い世代にはピンとこないであろうこの感覚はシニアの映画ファンに体感してもらいたいです。
キャスティング・ディレクターって難しそう
2022年3月27日
映画 #キャスティング・ディレクター #ハリウッドの顔を変えた女性 (2012年)鑑賞
2012年の映画が10年後の今年日本で公開されるのはなぜだろう?
出演というかインタビューを受けた監督や俳優のメンツがすごい
それだけ、#マリオン・ドハティ さんは関係者から信頼されてるんだろうな
ためになる
役に合った役者を探すだけでなく、役者自身も気が付かない素質を見つけて引き出すなんて凄い!数々の名作の裏側が語られ、映画好きにはたまりません。
作品を生かすか殺すかの重要な要素となる、キャスティングディレクターという仕事自体を良く知ることが出来て、とても貴重なドキュメンタリーだと思いました!
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