「魂の救済、とは」ザ・ホエール たまさんの映画レビュー(感想・評価)
魂の救済、とは
レスラー、ブラックスワン、などで名をあげているDアロノフスキー作
もとは舞台劇というだけあり、物語はほぼ室内で進む。場面展開、転換も少ない。
にも関わらず、圧倒的なダイナミズムで心を打たれる。
つまりはシナリオの重要性があり、俳優の演技、がそれだけ試される作品でもある。
まずはキャスティングの妙にもつきる。主演のBフレイザー。
プライベートなどでの問題から、メンタルヘルスに支障をきたし長らく表舞台から遠ざかっていた。
彼を支える看護師役のホンチャウの演技もよい。
人間の心理描写で、物語にここまでの強弱をつけられる。ということは派手なアクション、激しいカット割り、スピーディーな展開、などだけが映像作品の肝というわけではないのだな、ということだ。
冒頭から物語に入り込み、どのようなラストで終わらせるのか、と思いつつ。
鑑賞後の深い余韻。しばらく席を立てなかった。
死を前にする人間の肉体が、幸福であったという時間、記憶を凌駕するその瞬間を最後にみた。
涙とともに。自身忘れることのできない映画。
そういえばレスラーでもそうだったか。
そう生きることしかできない男の、死を前にした肉体の躍動を映し出したラスト。自身の幸福、栄光につながる破滅への跳躍。
Dアロノフスキーの、人間に対する深いまなざしがつきささる傑作です。
果たして自分は、過ちなく生きているのか、幸福に生きているのか、正しいとされる生き方なんてあるんだろうか。
かばこさん
共感コメントありがとうございます。
なるほど、現世にはない救済。
確かにそうですね。
最期のチャーリーの表情、ある種安息感をもあらわしているような気がします。
共感です。
共感をありがとうございます。
私にはチャーリー以外の登場人物全員が自身の不幸や弱さをチャーリーにしわ寄せして肩代わりさせていたように思えました。チャーリーの方にも、孤独が嫌だとか単に他人の介助が必要だとか、知っていても敢えて受け入れる必要性があったように見えました。
チャーリーの「救済」は、もはやこの世では成されないもので、最期の時にはこの世でないところに向かえる喜びがあったのかな、と思いました。
たくさんな共感やフォローをありがとうございます。
…時間、記憶を凌駕するその瞬間、まさにそこへ立ち会いましたね。
仄暗い彼の一室でほとんどが完結するのに、これほどの〝動き〟や〝生命〟〝光〟を感じるとは…とまた思い出しています。