「希望の物語」ザ・ホエール Sumichiyoさんの映画レビュー(感想・評価)
希望の物語
映画ポスターのインパクトと「ハムナプトラシリーズのブレンダン・フレイザーの主演男優賞作品」という文言で映画館に足を運びました。
この作品はとても難しい作品でした。絶望した主人公の破滅的な生活を撮影した物語だったけれど、どこか嫌悪感のような感情を持ちませんでした。それは巨漢の主人公であるチャーリーの感情に少なからず共感できたからだと思います。
チャーリーはすべてを捨てて愛を選び、その愛を失い暴飲暴食の破滅的な生活を続けた。でも、仕事は続け、教え子に希望を持たせていた。それは満ち足りた生活を送り、選択に後悔がなかったからだと思います。ただ、悲しみが残っただけで。娘のエリーはそんなチャーリーを憎みつつもどこか理解できたから関わることにしたのだと思います。
この作品の風景はすべてチャーリーの家の中でした。チャーリーの置かれた状況・視点・心の動きがダイレクトに伝わってきて、いい撮影法だと思いました。
主役のブレンダン・フレイザーの演技は圧巻の一言でした。生活・食事・移動などの動作はもちろんのこと、オーラのようなものからひしひしと絶望感が伝わってきました。まるで疲れ切ったプライベートを見ているような感覚でした。娘のエリー役のセイディー・シンクはその演技に圧倒されること無く、感情をむき出しにした演技がすばらしかったです。
見終わって、本心がいかに大切な感情かを改めて知りました。後半、チャーリーは"正直"という言葉を多用していました。確かに、まず正直な感情を持たなければ好きにも嫌いにもなれないと思います。伝聞や外見では判断が左右されてしまう。そういう意味で、死の間際に娘の正直な気持ちと向き合えたチャーリーは本当の父親になれたし、父親の正直な気持ちを知ることができたエリーも本物の娘になれたのだと思いました。