劇場公開日 2023年2月23日

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「文句ありにおもしろかった。」アラビアンナイト 三千年の願い JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0文句ありにおもしろかった。

2023年2月25日
iPhoneアプリから投稿

まず主人公のディティールが良い。
本の読み方に貧乏ゆすり。
ティルダスウィントンがノリノリで演じてる感じも良かった。

あと編集も凝ってて好きだった。
演出も映像表現としても引き込まれた。
たのしかった。
細かい音響?が入っているのもよくて、
メガネを取る時の音とか、
割れた瓶のかけらが擦れる音とか、
ヒールの音とかが聴けると嬉しいね。

ジンの歴史がもう世界の歴史というか、
物語の歴史のようで良かった。
特にイシルメダとゼフィールがお気に入り。

あのイシルメダの監獄部屋よ。
これはもうフェチズムかもだけど、
あの猛烈に人間味溢れる感じ。
堪らなかったですな。

打って変わってゼフィール。
彼女も主人公と同じ癖を持つ天才。
あの知的探究心は見ているだけで良いし、
クソみたいな生活には同情するし、
何だか彼女のことは知らぬ間に好きになってたなー。
それ故にラストは悲しかったですな……。

ただ文句と言うか疑問なのは、
愛という結末で終わらせてしまって良かったのかってところだよなー。
孤独や一人で生きること、学ぶことに満足し、
幸せを感じていたアリシアが愛を願うだなんて。
そして愛される生活をそれなりに幸せに感じていた。
これって、もはや映画の歴史がつくってきたものなんじゃないかと思うんですよね。
映画においてのハッピーエンドって、
愛を証明したり人間賛歌をうたうことだって、
もう何度も刷り込まれてしまったんじゃないかと。
それ以外の映画はあり得ない、みたいな。

……と思ったけど、そんなことないか。
『はじまりのうた』とかあんな爽やかなエンドを迎えたけど、
彼女は「愛」というよりは、自分のしたいこと、
自分の人生を掴んだわけだもんね。
「フランシス・ハ」とかもそうか。てか山ほどあるか。

今作だって、何か「知性」とか「知識」とかが
擬人化して彼女と結ばれるみたいなエンドだって
映像的にはおかしいのかもしれないけれど、ありなわけで。
アリシアとジンが愛で結ばれるのって、
どうしても性とか異性愛とかに見えちゃうところがあって、
否定はしないし、アリシアには元夫がいたわけだから
無い訳では無いんだけど、納得はできないんよな。

これは、答えを見つけるしか無い問題。

あと小言だけど、
あの隣人の描き方はどうなん?と思ったけど、
彼女らの間にも愛はあるのだろうし、
あのピスタチオのお菓子で全然許してたというか
心変わりしていたので、
それくらい寛容な人たちだったってことですかね!

JYARI