ホワイトバード はじまりのワンダーのレビュー・感想・評価
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ジュリアンのようなジュリアンになれ
『ワンダー 君は太陽』の続編かと思って特に下調べもなしに観たら、はとこくらい別のお話。
自分のしたことを反省し、何もしないという選択をしたジュリアンに、おばあちゃんが昔話を始めることで、これからの彼の生き方に影響を与えるであろう結末は予想できた。
しかしそこまでの命懸けの道のりが素晴らしかった。
収容所送りから逃れる映画はいつもハラハラする、今作はおばあちゃんの少女時代の話だと分かっていても。
あの夜の列車はどの映画を観てもなんだか不安になる。
映写技師もやってるジュリアンがプロジェクションマッピングのような風景を見せるシーンは、光が綺麗でとても好き。
納屋が世界の全てになってしまったサラに、恋心ダダ漏れながらも勉強を教えたり、少しでも楽しく過ごしてもらおうとするジュリアンが、健気で可愛らしい。
"外に出る=死"という状況の中で、真夜中の森のシーンは幻想的で美しいけれど、人種的というか民族的な違いか、もっとぎこちない方がピュアな感じで良かったかなぁ。
戦禍を生き抜いたサラに触発された孫ジュリアンが、顔を上げ自分の意志で前に進む。
良い映画だった。
一瞬の気の緩みがもたらした悲劇
私が貴方の立場だったら、私は貴方を助けない
『ワンダー 君は太陽』で、主人公オギーをいじめて学校を退学処分となったジュリアンに
祖母のサラが少女時代にナチスから自分を救った孫と同名のジュリアンの話をする。
基本的にサラの少女時代の物語だが、
・ジュリアンはポリオにかかり片足が麻痺して松葉杖で歩行している
・ナチスによるユダヤ人迫害がフランスにも及びユダヤ人であるサラにも危機が迫る
という背景。
ジュリアン一家はサラを救おうと必死だし、特にジュリアンは無上の愛をサラに注ぐ。
自身の命をリスクにさらしてまで。
サラはジュリアンを友達といっしょに軽く扱っていたし、蔑んでもいただろう。
それでも懸命に守ってくれるジュリアンに対し
「私が貴方の立場だったら、私は貴方を助けない」と率直に言う。
おべっかや忖度ではなく、率直に言える関係性を築いているところが素晴らしい。
このセリフはなかなか言えないと思う。
ナチスから迫害を受けて、サラは初めて人の優しさや尊さを肌身に沁みて感じたことだろう。
サラは、誰も迫害やいじめをしてはいけないし、人の命は等しく尊いのだということを
孫のジュリアンに伝えたかったのだろう。
そして、サラの思いが伝わり、孫のジュリアンの思考・行動が変わっていく。
現代でも元気なサラは画家となっていて、大衆に「人間万歳」と伝える。
そして大衆からも「人間万歳」との声が。
久しぶりに心が洗われるような洋画を観た。
前作も好きだったが、本作はもっと好きかも。
いつの日か戦争のなくなる日がくるその日を信じて、筆を置く。
空想の世界は永遠に広がる!
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