「女性の問題と人種の問題のバランスが悪すぎるのではないか?」カラーパープル tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
女性の問題と人種の問題のバランスが悪すぎるのではないか?
暴力的な父親や夫に虐げられてきたた女性が、そうした男たちから自立していく物語なのだが、主要な登場人物が黒人だけというところには、スピルバーグが監督した旧作と同様に、違和感を覚えざるを得なかった。
こうした設定であれば、「男たちの家の中で女たちはまだ奴隷扱い」と歌われているように、黒人であることと女性であることの二重の抑圧に苦しむ人々を描いても良さそうなものなのに、黒人であることの苦難に比べて、女性であることの苦難が大き過ぎるように思えるのである。
何も、人種による差別や偏見を必要以上に強調しろと言うつもりはないし、劇中でも、白人の市長夫婦に楯突いた黒人女性が投獄されるというエピソードが描かれるのだが、それでも、やはり、何のために黒人社会を舞台にしたのかが、今一つよく分からない。
もしかしたら、「女性の解放」という普遍的なテーマを、人種の問題とは切り離して描きたかったのかもしれないが、むしろ、黒人社会と白人社会の分断が強く感じられてしまい、ダイバーシティとかインクルージョンとかが叫ばれている今の時代に、わざわざリメイクした意味はあったのだろうかとも思ってしまった。
ミュージカルにしたのは良かったし、この点に関しては、黒人ならではのパワフルな歌や踊りが楽しめるのだが、その一方で、そうした歌唱シーンが、物語の推進力になっているどころか、ストーリーの流れを停滞させているように感じられたのは、残念としか言いようがない。
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