「大切に受け継がれた71年版「チョコレート工場」の精神」ウォンカとチョコレート工場のはじまり 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
大切に受け継がれた71年版「チョコレート工場」の精神
「はじまり」を描く企画には当たり外れがある。でもこの映画は実に良くできていた。「パディントン」のポール・キング監督は、原作の真髄を掴み、胸弾むリズムとちょっと枠組みをはみ出すくらいの破天荒さで彩るのが巧い。そして何と言っても要となるのはティモシー・シャラメだ。彼の存在感は寸分の狂いなく世界観に合っていて、最高にコミカルでキュート。歌声も優雅で美しい。そんな彼が押し込められる宿屋やその住人たちの描写には、監督が愛するジュネの「デリカテッセン」の影響があるとか。さらにダンスシーンにはアステアのテイストが見て取れる。嬉々としてルンパ役を演じたヒュー・グラントをはじめ芸達者の競演も楽しいが、重要なのは全てのエッセンスが1971年の映画「チョコレート工場の秘密」へ通じている点だろう。あの名曲のメロディ、セリフ、色褪せることの無い精神。両作を並べて鑑賞すれば最大限の妙味が堪能できること請け合いである。
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