「クセがない分、味気ない」ウォンカとチョコレート工場のはじまり tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
クセがない分、味気ない
ファンタジーとして、ミュージカルとして、その楽しさや美しさは存分に楽しめる。
実際、ウォンカと少女が風船を手に夜空を舞うシーンは、ロマンチックな歌と映像にうっとりとさせられるし、新装開店したチョコレート店のシーンは、「チャーリーとチョコレート工場」を彷彿とさせる夢のような華やかさでワクワクさせてくれる。
虐げられた者たちが力を合わせて巨悪を倒すという勧善懲悪のストーリーは分かりやすいし、「分かち合える者がいることこそ大切だ」というメッセージにも共感が持てる。
その一方で、母親を慕い仲間を大切にするウォンカの優等生的なキャラクターが、「チャーリーと〜」のシニカルでエキセントリックなウォンカと違いすぎるところは、やはり気になる。
この作品は、ティム・バートンやジョニー・デップの映画の前日譚としてではなく、それとはまったく別の、新たなリブート版として楽しむべきなのだろう。
クライマックスで、ウォンカたちが絶体絶命の危機を案外あっさりと切り抜けたり、悪者たちが大して懲らしめられたりしないのも物足りない。
せっかくローワン・アトキンソンを出演させて、しかもあれだけの台詞を喋らせるのなら、「Mr.ビーン」とは違った形でのドタバタ劇があってもよかったのではないだろうか?
あるいは、わざわざヒュー・グラントを抜擢したのなら、ウンパルンパの活躍がもっとあってもよかったのではないだろうか?
真面目で上品という点では好感が持てるのだが、「チャーリーと〜」のようなクセや毒気がない分、気の抜けたサイダーのような味気なさも感じてしまった。