「現代楢山節考」PLAN 75 はなもさんの映画レビュー(感想・評価)
現代楢山節考
78才迄働いていたミチはすごいと言うべきなのか、その年になるまで糊口をしのぐため働かざるえなかったと言う実態、それがなんともやるせ無い気持ちにさせた。
演出がとても細かい。
前半のミチは、ホテルで忙しく働き、自宅で立ち上がる時 年取ったら誰でも言いがちな「どっこいしょ」を言わなかった。
クビになった時、自分のロッカーの扉を丁寧拭きそれに向かって ありがとうございましたと言って去っていく、また、ちょっと贅沢した出前の寿司桶を洗い終えてきれいにフキンで拭き、その布巾のハジを整えて掛けていた。そして電話相談の時間が超過した時は、本当に申し訳ないと何度何度も見えない相手に丁寧に頭を下げていた。そんなふうに キチンと誠実に生活していた人が職を失い 糊口と生きるハリが無くなってしまった時に ふと入り込んだ魔法のプラン。
誰でも ふと考えてしまいそうだ。そこも怖い。
え〜、現代の楢山節考⁉️
横並びではなくて個々に 人生年齢を区切らせる選択を提供するってどう言う事⁉️
老いは悪なのか?
誰にでも等しく自然現象の老いは訪れるのに 生産性のない人間は 長く生きていてはダメだと言うのだろうか。
『人間』と名乗る者は 障害もなく精神も健全で ある程度資金が足り 誰の手も借りずに生活できる人こそ
生活していくのに値すると言われた気がする。
でも ミチが最後にした選択は、普通に生活して来たヒトの強さ、当たり前に生活して来た人の生き方が現れたのだと思った。
宮本役の河合優実は電話の声が良く アップのシーンの表情はとても良かった。
静かなトーンの中に 細かい演出、残酷な出来事、もしかしてありうるかもしれない怖さを秘めた映画で とても考えさせられた。
>自分のロッカーの扉を丁寧拭きそれに向かって ありがとうございましたと言って去っていく、また、ちょっと贅沢した出前の寿司桶を洗い終えてきれいにフキンで拭き、その布巾のハジを整えて掛けていた。
正にここ。実直さ、誠実さ、人に対する思いやり、背筋を伸ばして気品をもってちゃんと生きる高齢者を表していた。こういう人の尊厳が脅かされる様は見たくない。
確かに、楢山節考からインスパイヤーされていますね。ただ、倍賞千恵子じゃなくて、若かった倍賞美津子だし、こちらの映画はカンヌでも、パルム・ドールです。映画の内容も死にゆく老婆の悲劇というよりも、時代を引き継ぐ、若い世代がテーマだったと記憶しています。柳の下に二匹目のドジョウはいないと思いますが。
僕は役者ではないので、倍賞千恵子さんの演技力は分かりません。しかし、本質も含めて、静かな大人しい性格を演じたら、ピカ一です。僕はそこに意図的な事を感じました。今はそう言った役をやる老俳優はいませんが、悪女で業突張りの老婆役のうまい俳優に、目一杯の演技させたら、この映画大きく印象が変わると思いますよ。そして、それが普通だと思います。また、貧困な程、物欲も高い傾向だと思います。
はなもさん、倍賞千恵子さんの歌はYouTubeでたくさん聞けます。どれかまず一つ、であれば「サンライズ・サンセット」をお勧めします。ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の挿入歌。主役テビエは森繁久弥、次女役が倍賞千恵子さん。倍賞千恵子さんの伸びやかな声が忘れられません。
はなもさん、レビューコメントありがとうございます。「現代版楢山節考」共感です。自分事にいかに感じられるか。このような映画の力。表現の力が今、必要なのだと思います。体温を感じる事。原始的な行動ですが、言葉を超えて命を感じるストレートな表現ですよね。
コメントありがとうございます♪
改めて「現代楢山節考」だと、つくづく思いますね。
本作鑑賞すれば誰しも楢山節考が浮かぶと思いますが、「現代」という点が後からじわじわと沁みて参りました。
店屋物の器を洗って返すなど、昭和の頃は「常識」だったと思うのですが、就職したての平成初期に職場の先輩諸氏が昼食の出前を誰一人洗わずに戻していた姿に愕然とした記憶があります。(構成員の良識が最も求められる類の職種の一つだと思っていたのでショックでした。)
平成の30年間で、世の中はなんとまぁ、すっかり変わってしまった事か。いや「人の本質」はまったく変わっていないとも思うのですけどね。
「情報伝達の速さ」が「同調圧力」を増幅させ、「科学的根拠」という「権威」さえあれば「正義の名の下に」平気で他者を傷つける。
それが「現代」の最たる特徴かなぁと感じています。
本作が描いてみせた「仮想未来」も、キッカケさえあれば簡単に実現してしまいそうで恐ろしいです。
はなもさんも東奔西走、ご経験なされたのですね。心強いです。
幾つになっても、まだまだ知らない世界が待っているものだと実感中です。
映画という優れた仮想体験をきっかけにこれからも数多くのリアル体験を積み重ねたいものだと思う日々です。
(神々の山嶺、ご覧になったのですね♪漫画化は知りませんでしたが、夢枕獏さんの原作小説は発売と同時に購入してます。病身に鞭打って映画館行ってこようかなぁ)
今晩は
レビュータイトルが秀逸で驚きました。
私は、年代的にリアルアイムではないですが深沢七郎の著作”楢山節考”や(特にエッセイ))の”みちのくの人形たち””言わなければよかったのに日記”と、嵐山光三郎の”桃仙人”(個人的には凄く好き。)を読んでいたので、成程なあと思いました。
自分の命は、自然に任せたいです。
(勝手に大酒飲みだから、齢残り20年かと思っていたら産業医から"貴方は90歳までは大丈夫!”と言われ、あと半分もあるのか・・、何をしようかな。。、と浮かれているおバカです。)では。
はなもさん
みかずきです
共感&コメントありがとうございます。
仰る様に、倍賞千恵子は、さりげない所作の一つ一つを丁寧に演技しているので、自然な動作に感じられて、演技をしているという作為を感じません。
凄い女優だと思います。
では、また共感作で。
-以上-