「アクションが叫んでいる!」生きててよかった shironさんの映画レビュー(感想・評価)
アクションが叫んでいる!
新たな映画の魅力を知りました。
自ら命を絶つのではなく“生き抜く”
今の心に響く映画でした。
痛いシーンは苦手なんです。
とくにこの映画のファイトシーンは見ているのが辛くてしんどかった。
でも、それって実はすごいことだったのですね!
まだ知らない映画の魅力に出会いたくて、自分では選ばないような映画が観たい…
今回の試写会はトークショー付きで、主演の木幡竜さん、三元雅芸さん、アクション監督の園村健介さんのお話しが聞けました。(ゲストに伊澤彩織さん)
なぜに、監督ではなくアクション監督のトークショー??と思いましたが、鑑賞して納得。
アクションが語る映画でした。
トークショーでは「心情を表現するアクション」とおっしゃっていましたが、セリフが動きに変わっているだけで、思いの丈をアクションで伝えている。
なるほど!確かにそう言われてみれば。
一口にアクションと言っても、里見浩太朗の殺陣は美しくて惚れ惚れしますし、ジャッキー・チェンのアクションはリズミカルで楽しい。(例えが古くてすみません;市川雷蔵も素敵だけど、剣筋の美しさはやっぱり里見浩太朗かと)
実は痛みを感じていないアクションもあることに気づきました。
そして、たとえば同じキアヌ・リーブスでも『ジョン・ウィック』はスタイリッシュでカッコ良いし『マトリックス』は派手でスカッとします。
その映画のカラーやテーマに合ったアクションが組まれている。
アクション好きな方からすると「何を今更言ってるのか…」と思われるでしょうが、私にとっては目から鱗の気づきでした。
私が痛いと感じたのは、痛さを感じさせるようなリアルなアクションに仕上げていたから。
私が辛いと感じたのは、アクションで心情が表現されていたから。
具体的なお話も聞けたので紹介すると、殺陣の段取りの間をフェイントで埋める作業をしているそうです。
たとえば“右からのパンチをよける”段取りだと、リアルな戦いでは相手がパンチを打つまでには、お互いの隙をつく攻防がある。
右からのパンチが出る前には左ジャブのフェイントがあったかも知れない。
そのフェイントで出た一瞬の隙を相手が見逃さず右からのパンチを繰り出してきて、それをかわす…となると、かわし方もギリギリの感じの動きになるだろうし、多少体勢を崩すかもしれない。
つまりアクションの段取りの間に相手との心理戦や条件反射の動きを加えることでリアルさが増しているのです。
更に心情が見えるアクションにすることはこの作品のテーマにも不可欠。
決してアクションシーンだけが映画から浮くこと無く組まれていました。
次の一手がわからない嫌な緊張感で『ディストラクション・ベイビーズ』を思い出したのですが、アクション監督は同じく園村さんでした。
しかし…アクションという身体表現をこなせる役者さんって、本当に凄い!
殺陣師さん、アクション監督さんはもちろん凄い!
そして、パンチの当たる音
血の感じや、飛び散る汗
照明や撮影全てのスタッフのプロフェッショナルなお仕事が凄い!
私の心を揺さぶる映像は一人の力では出来上がらない。
改めて映画って素敵だなぁと思いました。
自分個人とは遠くかけ離れた「世界」
だけども自分自身も「世界」を作っている小さなピースの一つであることには違いない。
みんな「世界」と戦っていて、紛れもなく一人一人の人間が「世界」そのものなんだと感じるクライマックスに釘付けでした。
他人を不幸にしようが、自分の情熱を注ぎこみ、自分中心に生ききる。
そう書くと我儘だと誤解されてしまうかもしれませんが、絶対に誰にでも死は訪れる。良くも悪くも死だけは平等に訪れる。
立て続けに悲しいニュースがありましたが、決して自ら命を絶つことのないよう…
「世界」から不要とされている人間は一人もいない。だって自分自身が「世界」なのだから。
その時がくるまで懸命に生きろ!
逆説的かもしれませんが、そんなエールを感じました。
とは言え、私はどちらかと言うと幸子の方に感情移入しちゃう部分が多かったです。
「愛する人と少しでも長く一緒にいたい」と思うのはエゴなのか?
辛いけど、エゴなんですよね。やっぱり。
存在に依存している。
もちろん好きになるってことは、多少の依存も含むのでしょうが、依存しすぎるのは良くありません。
不安や心配に耐えられず、自分自身を保てなくなって、愛する一番大切な人を傷つけてしまう本末転倒な結果に。
お互いが自立していて、相手を尊重しながら寄り添えるのが理想。。。でも、そんなに上手く心のバランスが取れれば苦労しませんが。
過去の自分を客観的に見つめられるようになって本当に良かった。
銀粉蝶さんとのラストシーンは笑えて泣けます。
長井短さんと今野浩喜さんの掛け合いが笑えました。息ぴったりですごく良かった。
主人公たちとは対称的な夫婦として描かれていて。ある意味、お互いが自立した理想系??
経済的には依存しているかもですが。笑
でも、絵美は健児の夢を応援しているというよりは、健児のことは全てお見通しの上で丸ごと受け入れている感じで、少し寂しそうにも見えました。
こちらも惚れた弱みなんでしょうね。
#生きててよかった