劇場公開日 2024年1月5日

「次世代のアニメというのを感じた」BLOODY ESCAPE 地獄の逃走劇 白金卿さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0次世代のアニメというのを感じた

2024年2月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

難しい

関連作品のテレビアニメ「エスタブライフ」の方は未視聴であったが、谷口監督のインタビューでこの作品の名前が上がっていたので視聴。
ほとんど話題にもならず、周りにも見に行っている人がいなかったのでこれは期待しない方がいいかと覚悟して見に行ったが、良い意味で期待をとても裏切ってくれた。

マリオ、ミニオンズやディズニーピクサーまで行かない、2Dに近い雰囲気の3Dアニメ。最近だとギルティギアやシドニアの騎士(今回はシドニアと同じポリゴン・ピクチュアズ)で見る技術。

3D技術を使うと騙し絵や大げさな表現、個性あるクリエイターの才能を発揮しづらく、舞台挨拶によると制作側もキャラを作りにくいと語ってくれたが、そのため声優さんにリードしてもらってキャラ作りをしてもらったとのこと。優秀なベテラン声優が多く、その演技はとても上手く、完全に演劇であることを忘れられるほど3Dでも難なくキャラクターに愛着が湧いた。

エスタブライフの方は未視聴でなんの問題もないが、同じキャラがなかなか活躍する。

ちょっとエロい空気感(絵では表現していない。性風俗の話が出る。パンチラみたいなノリや見せるのはない)、ボインボインの敵キャラがなかなか揺れまくるのと、血の表現がかなりある上、四肢がもげる描写があるので、少なくとも中学生以上の方が見るのが良いと思われる。もちろん、大人が見るのもとても考えさせられるセリフをいってくれるので、そこはさすが谷口監督。

戦闘シーンは全編通してとにかくかっこいい。とにかく最初から動きまくる。しかも能力を活かした斬新な戦い方で、すごい。それこそ、中学生高校生にはたまらないだろう。2Dアニメではできなさそうなもので、時代の進歩を感じた。

キャラクターもとてもバランスが良い。シリアスになりずぎず、萌え萌えになりすぎず、女性向けのイケメンに寄せすぎず(男目線でもかっこいい)、キャラクターの被りも少ないので存在を覚えやすい。ギャグのキャラクターも作品を適度に明るくしてくれたし、ギャップに泣かされもした。

話の内容は少々複雑と感じ、自分は一回で全てを理解するのは難しかった。しかし、それでも十分に楽しめることができ、全てを把握しなくても楽しめるように設計されている。
そして、その複雑さ、深い設定等はもう一度足を運ぶといろいろと理解できて楽しめることができたため、複数回の鑑賞も眠気がくることなくとても楽しめた。細かく見る価値はある。

改造人間 vs ヴァンパイア vs ヤクザ というキャッチフレーズに関しては、期待しすぎるともしかしたら肩透かしを喰らうかもしれない。というのも、ヴァンパイアの設定に関してはそれほど従来のヴァンパイアを踏襲している印象はない。また、ヤクザも龍が如くのようなものほどそんなに掘り下げていないので、おまけ程度で考えた方が良いだろう。

また、タイトルの「地獄の逃走劇」、これがもしかしたらというか今時の人を惹きつけるワードではなかったのかもしれない。逃げるというのにかっこよさ、魅力を感じないのかもしれない。ただ、内容は逃げるよりもかなり戦っていた印象がある。スペースラナウェイ言いつつ破壊しまくってたイデオンとある意味近い。

しかし、総じてつまらないと思う箇所はなかったので、SFアニメが好きな人、また少数派に悩んでいる人は共感が得られるだろうし、生きる目的が特にない人にもこの作品は考えさせてくれるだろう。

SFアニメ、それも戦う系なのでデートで一緒に女の子とみるのは微妙かもしれないが、一般人にも流行りからちょっと外れてしまった生き方をしている人にも十分お勧めできる作品だ。
ただ、深夜アニメ好きでない人からするとエスタブライフのキャラがどうしても深夜アニメ向けに作られていたため、少々そのキャラデザやノリ等に癖を感じるかもしれない。

なお、続編も作ってくれそうなことを語ってくれたので、次回作が出ればもちろん劇場で見たい。

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白金卿