「ホン・サンスの映画哲学」小説家の映画 Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
ホン・サンスの映画哲学
観るものの心のどこかにチクリと刺さる会話、長回しの緊張感、固定カメラからのズームアップという遊びのようなリズム。
ドキュメンタリーではないが、ウソがないってセリフがあったけど、まさにそんな感じ。
だけど、ホン・サンスの心にはそれ以外の何かが見えているはず。それはいったい何だろうと考えながら観ていた。
なんとなく寒々としたモノクロの世界で、劇中劇の鮮やかなカラーにハッとした。キム・ミニの夫の存在と二人の関係が面影として現出していたのだ。
面影とは、目の前にはいない誰かことではない。そのことやその人のことを、思えば見えてくるというか、思いをもつことがきっかけになって浮かぶもの。
葛藤を持つ大人たちの事情を「面影」として撮ること。それがホン・サンスの映画哲学なのかもしれない。
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