「不思議なほど心地よいエンドレスな会話の中で、ほっと深呼吸」小説家の映画 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
不思議なほど心地よいエンドレスな会話の中で、ほっと深呼吸
『小説家の映画』はやっぱりいつものホン・サンス映画だった。ここでは取り立てて大きな事件など何も起きていないように思える。だが、「お久しぶりです」「ああ、お元気でしたか?」から始まる何の変哲もない会話のキャッチボールで、各々の性格や人生の現在地が全く説明的でなく、極めてナチュラルに紡がれていく点には驚かされる。このソウルからちょっと離れた場所で出会う二人の女性、小説家と女優は、共に本業からちょっと距離を置いているらしい。ただ、感性のままに言葉を返す女優に比べて、小説家は偶然を予め計画しているようにも思える。だから何だというわけではないが、とにかく彼らの会話に引き込まれると最後。こちらはいろんな言葉や表情に想像力を刺激され、彼らのあれこれが知りたくて仕方がなくなってしまう。そんな余白が多めなのもホン・サンス映画らしい。大都市から離れてゆっくりしている人たちの空気感が何だかとても居心地よいのだ。
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