「きっとまた繰り返すんだろうな」苦い涙 komasaさんの映画レビュー(感想・評価)
きっとまた繰り返すんだろうな
限られた登場人物で話が進む室内劇。
地位も名誉もある主人公が、実はそれぞれの登場人物に転がされている自己愛の塊であるという滑稽さ。それを個性的な登場人物と、舞台設定等の妙で際立出せている。
上手くオチはついて幕を閉じるのだが、この主人公は翌日からまた同じことを繰り返すのだろうなと思ってしまう。
登場人物に持たせた属性、象徴するものを明確にした事がとても良かったと思う。
komasaさんへ、コメント返信遅れました。
自信が持てなかったので、ラスト見直しました。カールはピーターに顔を近付け、唾を吐きかけています。二人だけに戻ったアパルトマン、自分の愛を受け入れてくれるのかと思ったら、今更ながら(君の話を)と尋ねるピーター。3年間一緒にいて何も分かっていないピーターに落胆の怒りがそうさせたようにも見えます。色んな解釈ができるオゾン演出の曖昧さ=妙味ですね。
komasaさん、共感とコメントありがとうございます。
仕事に恋愛感情が絡んでしまう職業の中でも、映画監督や舞台演出家はその作家の個性を更に匂わせます。映画ファンとしては、そこも観る楽しみなのですが、この主人公のように周りが見えなくなる程夢中になると大概失敗しますね。でも経歴から察するとファスビンダー監督はその失恋の経験を創作の活力に転換して、忘れる為も含めて映画制作を続けたように思われます。komasaさんが言われる、主人公は同じことを繰り返すだろう、に共鳴します。
公私混同で言えば、最後彼の元を去るカールが謎多き人物です。ピーターの暴君に耐えることと尽くすことに満足感を得ていた仕事人間で、特殊な恋愛感情もあったような描き方でした。優しくされて初めて抵抗したカールですが、冬の夜道を歩き頭を冷やして程なくピーターの元に戻っていくのも予想できます。物語が完結しても、その後どうなるか観る人の想像力で楽しめるのも、良い映画の特徴ですね。