「ジワジワと、よかったな〜、と思える作品」マイ・ブロークン・マリコ スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)
ジワジワと、よかったな〜、と思える作品
永野芽郁主演です。まあ、ほぼそれだけで観にいきました。「俺!物語」の実写映画でヒロインを演じた頃から気になって、「ひるなかの流星」って、ベタベタな少女漫画原作のヒロインで、おぉ〜これはいい!、と密かに推していました。そうこうしていると、朝ドラヒロインになって、すっかり有名になりましたね。
「君は月夜に光り輝く」って、これまたベタベタな恋愛映画もありましたね。どんなストーリーかは忘れましたが、要は「セカチュー」ですわ。「わたすい」「君嘘」と言ってもいいかな。残念ながら「きみつき」みたいに略語が出来るほどヒットしませんでしたがね。
さて、映画の方ですが、なかなか面白かったです。やさぐれOLのトモヨは、ニュースで親友のマリコが自殺したことを知る。毒親の家庭で育ったマリコ、トモヨはそんな親からマリコの遺骨を奪い、生前に行きたがっていた岬を目指す。
所謂ロードムービーで、登場人物もトモヨと、回想シーンでのマリコ、と岬で出会う男の3人ぐらいしかいない。まあ遺骨と二人が中心なので、独り言かモノローグが多くなる。ならば、漫画にすれば良いのに、と思ったら漫画原作でした。Kindleで速攻で買い、短編なのであっという間に読めます。
原作を読んで思うのは、映画の方も、もっと構図を凝ってみても良かったかも。原作の良さってテンポなんですよね。映画は丁寧な分、モサッとしているかな。「まりがおか岬」へ行こうと思い立つカットも、泣かせたいのは分かるが、もっとトモヨの思い立ったら即行動の
機敏さを出した方が良かったかも。
最後のマリコからの手紙に何が書いてあったのか?映画でも原作でも語られていません。ただ、トモヨはマリコからの手紙を読んで、納得した終わりになっているので、本編からの流れに沿った解釈で良いんじゃないか、と。
たぶん「生まれ変わってシイちゃんの子供になるね。だから佳いひとを見つけて幸せになって」ではないか、と。ハッピーエンドに振り切るなら、こういう救いのある解釈にしたいですね。
永野芽郁ですが、この役どころには合っていたと思います。元美少女のやさぐれOLってのがポイントですからね。でも、こういうドスの効いた役が似合うか?と言われると、美少女枠で言うと、そこは橋本環奈の方が向いていますかね。
菜緒のぶっ壊れた感じは良かったです。彼女の拗らせ系の演技は上手かった。パンケーキ屋のセリフも、途中から肩を落としリラックスして「私はただシイちゃんが心配してくれればいいの」と上目遣いで語る、ここは上手いな〜と。
全てを語らず、読者に解釈を委ねる感じの原作だったので、映画オリジナルをもっと入れても面白かったかも。私なら菜緒のマリコをもっと掘ってみますかね。
父親や交際相手からDVを受けまくってトモヨしか心を許せる相手がいないマリコ。では何故マリコに黙って自殺したのか。助けて欲しいというメッセージは無かったのか。そのあたりを掘り下げたいかな〜。
映画の監督さんは逆で「これはトモヨの葛藤の話だから」という感覚だったようです。なので、マリコの本心は分からないまま、トモヨ目線だけで作品としています。これはこれで正しいんですがね。
気づくと結構、感想を書いてしまった。観た直後は「駄作ではないが、なのが引っかかるのだろう」って程度の感じでしたが、後からジワジワと楽しめる佳い作品でした。