「【チェルノブイリ原発事故を風化させない意義ある作品。今作の正式サイトを見れば、ロシアを統べる愚かしき男に忖度したプロパガンダ映画ではない事が分かる。現況が、如何に危機的状況かが分かる作品でもある。】」チェルノブイリ1986 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【チェルノブイリ原発事故を風化させない意義ある作品。今作の正式サイトを見れば、ロシアを統べる愚かしき男に忖度したプロパガンダ映画ではない事が分かる。現況が、如何に危機的状況かが分かる作品でもある。】
ー 私は当初、この作品は幼き頃に微かな記憶があるチェルノブイリ原発事故で、原発近くにあったキーウ市の市民(今作は2020年製作であるので、劇中では”キエフ”と字幕で出る。)及び欧州他世界への二次放射能被害を食い止めようとした当時の軍人、消防士、施設関係者の姿をヒロイックに捉えた、現代ロシア当局によるプロパガンダ映画ではないかと懸念していた。
が、それは杞憂であった。
正式サイトに記載されているコメントと、他の筋から調べた結果、プロパガンダ映画ではないと判断し、観賞した。
尚、「ラブレス」などを制作した今作のプロデューサーが、ウクライナ人である故に、現在、彼の過去作品はロシアでは上映禁止になっている・・。-
◆感想
・チェルノブイリ原発事故直後のシーンはVFXによるものであろうが、チェルノブイリ原発事故がどれだけ恐ろしい事故であったかが良く分かる。
焼けただれ、吹き飛んだ屋根。落下してくる建物の一部。火傷の損傷が激しい消防士たち・・。
・そんな中、主人公である消防士アレクセイ(今作の主演・製作・監督も担当したダニーラ・コズロフスキー)は且つて恋人だったオリガと久方ぶりに再開するが、急遽駆け付け、自体収拾のため、危険極まりない基地内を奔走する。
- アレクセイと、オリガの以前の関係性の描き方が、粗い。想像で補うが・・。-
・又、水蒸気爆発を防ぐために、命を懸けてアレクセイや大佐や、施設職員が熱湯と化した地下道を進むシーンも、観る側の知識不足故か、分かりずらい。勿体ない・・。けれども、臨場感は半端ない。私に、正しき知識があれば・・、と思ったシーンでもある。
・アレクセイが”何故、爆発したんだ!”と施設院職員に問いただし、職員が”・・人災です”と答えるシーンを見て、矢張り今作はプロパガンダ映画ではない事を確信した。
- プロパガンダ映画であれば、自国のミスを認める台詞を入れる筈がない。-
<今作品は、チェルノブイリ原発事故を風化させない、意義ある作品ではある。
が、ストーリー展開が粗い事と、人物造形がしっかりされていない分、映画としてのクオリティには、一部疑問符が残る。
だが、それを吹き飛ばす臨場感溢れる原発内のシーンの数々や、消防士アレクセイを始めとした、消防士たちの姿や、軍のボリス大佐、施設職員が身命を賭して、民のために奮闘する姿は、心に響く。
それにしても、あの大惨事の際に旧ソ連をを統べていたのが、ゴルバチョフで良かったと心から思った。(彼の方の奥さんは、ウクライナ人であり、現政権を強烈に批判している。)
現在、ロシアを統べる男はこの事故から、何も学んでいない。
何しろ、キーウ近郊にある核施設に攻撃をしているのであるから・・。
そして、間違いなくあの男であれば、この事故を諸外国には告げず、独裁国家お得意の情報統制を掛け、”知らぬ存ぜぬ”を通していたであろうことは、明白である。
今作は、あの国に、核爆弾が多数ある事に、暗澹たる気分になった作品でもある。
最後に、チェルノブイリ原発事故で自己犠牲の元、もしくは放射能により(ガイガーカウンター値700レム!と救急車内で映し出されるシーンあり)命を失った方々へは、エンドロールで流れた通り、敬意と哀悼の念を表したいと思った作品でもある。>