「自分より誰かの幸せを優先してしまう男性と犬の物語。」ハウ movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
自分より誰かの幸せを優先してしまう男性と犬の物語。
似た物同士、結びついた民男とハウ。
自分の事より好きな相手がいる婚約相手に突然見放され、一緒に住むために買った家だけが残り、声帯を取られている保護犬を引き取り、ハウと名付ける。
一緒に四季を辿り楽しく過ごしていたが、うたた寝をした隙にボール遊びが大好きなハウはボールを追って、運送トラックに乗ってしまう。
東北についたハウは、見知らぬ人に餌を貰い、震災で転校を余儀なくされて自殺願望まで抱いた女の子に寄り添い、震災で余震だらけだった浜通りがシャッター街と化した中の傘屋のおばあさんを励まし、北海道でDVに悩んだ元の飼い主が逃げ込んだ群馬のシェルターに辿り着き、DV野郎を助け、民男がいる神奈川まで戻ってきた。
家を引き払い川沿いに引っ越した民男は、ハウとよく遊んだ川沿い近くの1LDKに引っ越したタイミング。
そこで、ハウとやっと再会を奇跡的にできたのだが、ハウは夫を亡くした女性とその子供のところに迷い込み、ブンと名付けられて飼われていたのだった。
どんなに再会を夢見ていたか。どんなに喪失感で悲しかったか。
でも、ハウの今を知った民男は、ブンと名付けた飼い主の親子に、事情を告げる事なく、ハウのこの先の幸せを願って、その親子が救われる事を祈って、本当のさよならをする。
もうその再会からのさよならの場面で涙腺が崩壊してしまい、その日1日使い者にならないくらい泣いた。
犬側は愛された記憶を一生忘れない。だからこそ、一生幸せにできないかもと少しでも不安があるなら飼ってはいけない。民男はどれだけ後悔に駆られた事だろう。
でも、ハウ側はなんとも思わず巡り巡る人に優しさを分けているだけなのだろうが、民男もハウに救われた1人。だからこそ、ハウが救って歩く相手を自分だけで独り占めしようとせず、他の誰かを支えてハウが幸せに飼われているならいいかと断腸の思いで手放したのだと思う。
ハウも、民男の事が大好きで、戻ってきたのだと思う。
お互いがお互いの幸せを願う、かけがえのない関係性。
そして、民男の優しさを理解し、同じくらいの優しさを持つ女性、足立さんと民男が親しくなれたのもハウ繋がり。
ペットではなく、犬は家族で、犬がもたらしてくれる感情はずっとずっと色褪せない。
私自身、干支ひとまわり以上ペットロスという名の家族を失った感覚でずっといるので、犬がいる幸せと失う悲しみ、両方をどっぷり感じた作品だった。