「Hurtful」ハウ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Hurtful
このビジュアルを見てどんな映画なのかなと想像します。予告の流れを見ても飼い主の元からなんらかの理由で逃げてしまった白い犬が帰る道中で様々な人を幸せにしていく映画なんだろうなと思うじゃないですか。いや、合ってるんですよ。ただその道中がサイコな出来になっており、ターゲット層ガン無視、というか悪い意味でネタバレ厳禁な作品でした。
良かった点
・ハウが可愛らしい
とにかくハウが可愛い、これがこの作品の数少ない良いところです。大きな体を揺らしながらめっちゃ走ったり、人に懐いたり、無邪気にボールを取ったり、俳優犬ベックに賞賛を贈りたいです。
今作の良いところ… そ れ だ け で す 。
悪かった点💢
・登場人物の常識が欠如している
まず冒頭の主人公・民生(田中圭さん)の婚約者が昔好きだった人が離婚したから、そっちに移るという軽いノリで婚約破棄、しかも式場のレンタルもキャンセルしなきゃならないし、家のローンも残っている、それなのにカフェのドリンク代1000円だけ置いて去っていくとかいうゴミっぷりをいきなり炸裂させてきました。もうこの時点で「は?」と思いましたが、それはこの後も続いていきます。
課長夫婦もブリーダーだかなんだか知りませんが、傷心した民生にハウを押し付けるような形だったのも犬を守る人間としてどうなんだ?と思いましたし、白い大型犬が轢かれただけでハウと判断したのも非常すぎやしないか?と思いました。ハウを失った民生に対する同僚のセリフも2度も大切な存在を失った人にかける言葉ではありませんでしたし。後述していきますが、ハウが脱走するまででかなり不快になったのに、不快指数はどんどん加速していきます。
・やるジャンルを履き違えている
オムニバス形式で繋がれる今作は、同時に社会問題も提起しているので、段々ハウとの交流よりもそっちに目がいってしまったのもかなり悪手だったと思います。3.11、シャッター街、DV、宗教。別にこの作品でやらなくても良くないか?と思いましたし、ミステリーなどで扱う代物じゃないかとも思いました。犬とのハートフルな物語を期待して観に行く層が殆どだと思うので、これは自己満足がすぎるなと思いました。
3.11もかなりしつこく入れられましたし、それが物語に役に立っているようには思えませんでした。放射能による差別、正直10年以上経っている今、そんな差別をする人間がいるのか?(まぁごく稀にいるんだと思いますが)と疑問に思いましたし、途中のダンスシーンはGReeeeNの主題歌繋がりで使いたかったんだろうなというファンサービスだと思いますが、別にいらなかった気がします(GReeeeNは好きです)。放射能を浴びたことでいじめられるシーンもあっさりとしているので、描くなら描け!描かないのならそのテーマを入れるな!と思いました。ハウがしたことといえば、少女を電車に導いたくらいなのでハウも長らく人間の愚かさを見せつけられていると思うと…。
シャッター街のエピソードは無難に良かったです。宮本信子さんとハウとのツーショットは微笑ましかったです。
問題は修道院でのエピソード。ここのエピソードがとち狂っていました。ハウの鳴き声で神のお告げが聞こえただなんだ言ったり、キリストの歌を歌い始めた時点でうーんと唸っていましたが、とんでもないのがDV夫が修道院に殴り込んで妻を取り返そうとするあまり、カッターでシスターや関係者たちを切りまくるというこのポスターからは想像できないほどの血が噴き出ました。映倫はマジで仕事してんのか?と思う判断をするんですが、今作はPG12で殺傷があるという項目を明記するべきだなと思いました。しかもその後に暴走運転からの子供を轢きかけて脇道に逸れ、車は炎上。もう自業自得すぎます。それを助けるハウを描きたかったんだと思いますが、その過程があまりにも酷すぎる(ハウがうるさいから声帯を切る、それならシンプルに捨てるの方が良かったのでは?と思いましたし、シンプルに妻に暴力を振るってる時点でアウトですね)ので共感もクソも無いですし、それで改心するとかあまりにもご都合すぎやしないかとも思いました。あのままハウが見捨てて、断末魔を上げながら爆死してくれたらまだ良かったのに…。
最後のハウとの再会、もう違う母子の元にハウは名前を変えてリードを繋がれている、まぁこれは民生が家を引っ越したというのが運の尽きだったようにも思えました。ここで「この犬僕が飼ってた犬なんです!だから返してください!ほらこんなに懐いているでしょう!?」とか言ったらヤベー奴だなと思ったので、ここでのお別れの判断は仕方ないなと思いました。でも仕事場の後輩の女の子狙ってそうだったのでモヤモヤっとしましたが。
・地味に主人公もヤバイ
立ち入り禁止の場所に無断侵入して遊ぶのもアレですし、そこに入ってきた子供に注意もせずそのまま眠りにつき、しかもハウにリールを付けていないという無関心さ。あれだけ愛しているなら場所を譲るなり何かしらできたはずなのになと思いました。中盤以降ハウのことを忘れてヒロインとの談話だったりを繰り広げたりと、序盤のワチャワチャしてた感じはなんだったのか。これは製作側のキャラの肉付けがなってなかったなとも思いました。
・池田エライザの謎露出
悪かった点というと難しいところで、ヘソだしの格好はとても可愛かったんですが、物語上必要なのかなと思ってしまいました。監督か脚本家か製作陣の好みなのか、それとももっと上の指示なのか、分かりませんが不要だったと思います。
とりあえず今年ワーストクラスの地獄映画で、なぜこれを映倫はGで通したのか、製作陣は何も思わなかったのか、不思議で仕方が無い、そんな作品でした。
鑑賞日 8/19
鑑賞時間 16:00〜18:18
座席 G-4