「本当にアメリカ映画なのかと疑ってしまった」カモン カモン 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
本当にアメリカ映画なのかと疑ってしまった
伯父さんと甥っ子。シーンの多くがふたりのやり取りに割かれる。情緒の発露とその後の反省、そして人生観。ふたりの演技があまりにもハイレベルで、本当の伯父さんと甥っ子にしか思えなかった。ホアキン・フェニックスの演技が名人級なのは映画「ジョーカー」で納得していたが、甥っ子のジェシーを演じた子役が凄い。
子供たちへのインタビューは、用意された台詞を話しているのだと思う。子供たちの答えがあまりにも哲学的すぎるし、洞察力に優れすぎている。こんな子供ばかりだったら世界はあっという間によくなるだろう。そう願っての台詞かもしれない。本当にアメリカ映画なのかと疑ってしまった。もちろん肯定的な意味合いである。
ジェシーが自問自答のインタビューで答えた「予想したことは何も起こらない。そして思いもよらないことが起こる。僕たちは進み続けるしかない。どこまでもどこまでも(カモンカモン、カモンカモン)」という台詞が、おそらくコロナ禍を踏まえてのものだと分かる。奇しくも寺田寅彦の名言「天災は忘れた頃にやってくる」を思い出した。
ドビュッシーの「月の光」がジェシーとジョニーの心模様を彩る。何度も使われるこの名曲が流れるとき、ふたりの心が揺らいでいくシーンが映る。この曲を聞く度にこの映画を思い出すことになりそうだ。
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