カモン カモンのレビュー・感想・評価
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大丈夫じゃなくてもいい
日常にはたくさんの音がある。でも全ては聴こえない。聴かなくてはならない音、聞かされる音、聴いてしまう音ばかりで聴きたい音を探す場面は多くはない。
甥っ子ジェシーは父が不穏な状態が続き母と一見穏やかなだがヒリヒリした生活が続いている。そんなジェシーの子守にやってきたジョニーおじさんの仕事道具のマイクで、ジェシーは音を拾い出す。自分の聴きたい音を探しながら。これがエンパワメントのきっかけだったんじゃないかな。
親なき子と子なき親のロールプレイも大人からしたら、うっとおしいけど彼なりに最悪の事態に備えてたところと、まだ最悪の事態ではない自分を確認していたのかも。
大人でも子供でも一本踏み出すキッカケは「神の啓示」のようにはやってこない。
ともかく「この世はしんどいこともあるけど、先へ先へ」と進んでいく価値があるはず。
ジェシーがおとなになってこのおじさんとの、日々を思い出してモノクロなのかしら。
余韻のある素晴らしい作品でした。
子役がすごい、孤独と寄り添いと癒しの物語
とある事情からしばらく甥っ子の面倒を見ることになった、ラジオジャーナリストのジョニー。二人の交流を描く話だが、設定がなかなか重い。
ジョニーと妹のヴィヴは1年前まで認知症の母親の面倒を見ており、介護における考え方の違いなどでぎくしゃくしていた。ヴィヴが息子のジェシーの世話を兄に頼んだのは、精神を病んだ別居中の夫の世話をするためだ。ジョニーは以前付き合った女性はいたが別れを告げられた過去がある。ジェシーは大人から見れば風変わりな子供で、母親ヴィヴの子育ての苦悩も描写される。子育て経験のある人は特に、ジェシーが気まぐれに姿を消す場面などビリビリ来るのではないだろうか。
独身男性とやんちゃな甥っ子の邂逅となればほっこりさせてくれる話を期待しがちだが、そう簡単にはほっこりした感情に辿り着かず、特に前半は地味にしんどかった。
それでもそんな空気が苦痛にならなかったのは、ジェシー役のウディ・ノーマンの愛らしさと神がかった演技に魅入られたからだ。見ている最中は「上手い演技だなあ」とさえ思わせない自然さ。でも、父親の不安定さや伯父に預けられた不安からくる子供らしい憂いがちゃんと滲んでいる。大人を試す我儘な素振りの、ジョニーが苛立つのも分かるしその裏にあるジェシーの寂しさも分かる、絶妙な塩梅。ジェシー自身が自分の中の気持ちを上手く処理出来ない、その不器用さがきちんと伝わってくる。それでいて、安易な御涙頂戴のオーバーアクトはない。
ホアキン・フェニックスのバディ役とも言える大役を、彼は全く引けを取らずに果たしていた。ジェシー役にふさわしいと100パーセント確信を持てるような子役が見つからなければ本作を撮らないと決めていたミルズ監督が、「この子しかいないというのは明らか」と評したのも納得。
折々に挟まれた、ジョニーが仕事として行なったアメリカ各地の子供たちへのインタビュー映像が印象的だ。作中に出てきた4都市に実際に住む子供たちの声だという。監督はモノクローム映像にした意図について、現実と切り離した寓話的な物語の世界へ観客を誘導するためと答えているが、このインタビューのくだりはドキュメンタリーの風情がある。
彼らの語る内容はストーリーと直接繋がるものではないが、その素直で、時に真理を突いた言葉、未来への希望や不安を聞くうちに、子供の頃の世界の見えかたをおぼろげに思い出した。
ウディが体現した不器用で自分の感情を持て余す子供に対し、じゃあ大人は長く生きた分みんな器用で立派かというと、全然そんなことはない。言葉にならないような感情に振り回されたり、心の安定を失ったり、人生の節目の選択において賢く立ち回れなかったりといったことが往々にしてある。
予想出来ない未来へ向けて、試行錯誤しながら生きているのは大人も子供もそう変わらないのだ。
愛おしさが胸いっぱいに広がっていく
ただただ愛おしさがあふれて止まらなかった。本作には観客の心をふっと和らげて、肩にのしかかった重みを軽くしてくれる力がある。私の場合、特にインタビューマイクを向けられる子供たちの言葉に胸打たれた。これからの未来を担う彼らが放つ、どんな優れた哲学者や思想家よりも人をハッとさせる考察や思索。それは期せずして叔父と共に取材旅行を続けることになる9歳の甥にも通じることで、とりわけ彼が刻んだ言葉はこの時代を生き抜く上で指針となりうるもの。少なくとも私はこの先ずっと忘れないだろう。さらには、ホアキン・フェニックス演じる叔父と甥が無邪気に戯れるシーンの素晴らしさ。互いに心から信頼しあえる間柄でなければあんな空気感は醸成できない。濃密で生き生きとした関係性がそっくりそのまま映像に焼き付いているからこそ感動はひとしおだった。愛情や温もりに満ちたホアキンにこれほど優しい気持ちにさせられるとは思ってもみなかった。
子供の哲学
幸せで 悲しく 豊かで 空っぽな変わり続ける人生の意味を
ラジオジャーナリストのジョニーをホアキン・フェニックスが演じる。
9才の甥ジェシー( ウッディ・ノーマン )から次々と投げかけられる問いかけに、丁寧に言葉を返していたジョニーが、自己と対峙するうち、苦悶の表情を浮かべる姿が印象深い。
伯父と甥という、親とはまた違った距離感を絶妙に表現。
子供達が率直に語るインタビュー映像がいい。
ー 全てを解決するという不可能な任務
BS松竹東急を録画にて鑑賞 (字幕)
先へ先へ…
ジェシーの母ヴィヴは一年前に認知症の末他界した自身の母親を看取ったばかりなのに、今度は高額で招聘されたプレッシャーで精神を病んでしまった音楽家の夫の面倒までみることに。ジェシーの世話を母の介護を巡って意見が衝突して以来疎遠だった兄ジョニーに任せようとする。
9歳のジェシーは利発だがセンシティブな男の子。両親のいない淋しさを大音量のクラシックで紛らわせようとしたり、旺盛な好奇心で伯父のジョニーを質問攻めにする。
ラジオジャーナリストのジョニーは独身で子育て経験はないが、普段から未成年を相手に彼らの意見に耳を傾けてきた仕事柄、気軽にジェシーの世話を引き受けたものの、彼の個性や子供ならではの言動に振り舞わされて次第に辟易してゆく。
ジョニーや彼の仕事仲間は子供たちへのインタビューの際に「いやな質問ならノーと言って」と伝えるが、子供に対して普段からノーを突き付け抑圧していることに、多くの大人が無自覚。あるいはそれが当たり前だと考えている。
仕事を通じて子供の理解者を気取っていたジョニーは、ジェシーとの共同生活を通じて子供との接し方だけでなく、家族のあり方をあらためて学ぶことになる。
「子供は未来からの使者」。かつてそう言った人がいた。
子供たちの考えを押さえつけるだけでなく、彼らの意見を遮らず素直に受け止めることが正しい未来に繋がる気がする。
グラフィックアーティスト出身のマイク・ミルズ監督は身近な問題をテーマに幾つもの傑作を発表し、注目を浴びる俊英。
本作でも社会における子供の存在意義を問い掛けているように思える。
『オズの魔法使』や様々な著作物の引用、なぜ全編モノクロにしたかなど、あらゆることに寓意が込められている気がするが、個人的にいちばん気になったのが、兄妹の母の寝室に掲げられていたデューラーの『野うさぎ』。
あらためて調べると多面的な解説がなされている名画の使用に、いったいどんなメッセージが?
自然体の演技でジェシーをヴィヴィッドに演じたウッディ・ノーマンはクソガキ度-1.0/Cレベルにチャーミング。くりくり巻き毛が可愛いが、これからどんな役者に育っていくかも楽しみ。
ジョニー役のホアキン・フェニックスも、ヴィヴ役のギャビー・ホフマンも、子役出身。
BS松竹東急にて初視聴。
こんないい映画(しかも近作)をチョイスできる局があとひと月ちょっとでなくなるなんて残念すぎる。
子どもをみくびってはいけない
未来のため、言葉と言葉の間を考えろ
この作品は、ジェシーとジョニーの会話、ジェシーとの出来事を録音するジョニー、そしてジョニーが行う子どもたちへのインタビュー、の三層からなる。
ジェシーとのやり取りを大人の言葉で整理すること。ジェシー以外の子どもたちの言葉。これらの間にあることを考え感じ取らなければならない。
例えば子どもが「昨日は部屋で一人で遊んだ」と言ったとする。
それはただの言葉、かもしれない。大人しく一人でいられたことを褒めてほしい、かもしれない。今日は一緒に遊んでほしいというアピール、かもしれない。この「かもしれない」ところを考えるのが大人の役目だ。
取るに足らない会話と頭ごなしに切り捨ててはいけない。
子どもたちはしきりに言う。大人は分かってないと。子どもの気持ちや考えを受け止めようとすらしない。子どもは単なる喋る機械かのように扱う。
どんな大人だって子どもだった時期はある。自分が子どもであったときのことはすっかり忘れてしまったのか?
子どものときは子どもなりに考えてたでしょ?その時の自分の言葉は取るに足らないものだったのか?大人になった今振り返ればそうかもしれない。しかしその時は、それが100%の言葉で、価値のある言葉だったはずだ。
作品のテーマとしては「未来」だろう。
未来を考える。そのために今を考える。子どもの今の言葉を考えることで未来につながるし、客観的に子どもの未来を考えることは自分の未来を考えることにもつながる。
無為に時間を浪費するだけでなく、先へ先へ、紡いでいくために思考を停止してはならない。
傑作とまではいかなくとも、この作品が退屈なんてありえない。むしろ行間がギッチギチで、一瞬たりとも目が離せない。
言葉を言葉のとおりにしか解釈できない人にこそ観てほしい作品だが、そういった人はそもそも分からないだろうし、なんとも歯がゆい。
素朴なチョコチップクッキーの様な作品
ライフサイクルの再解釈
佳作。でもそれ以上の何かを感じる。
佳作です。良い作品だけど、「生涯ナンバーワンだよ!」という位置付けには決してならない映画。けれども、なぜだか心に残っています。
ホアキンの演技は素晴らしい、本当にホアキン自身の話のように見えてしまう。あまりにも愛らしい2人の生活。映画を見たというよりは、その2人の本当の生活を見たような気分になります。
劇中にはさまれる子供たちのインタビューも、いまの時代のステレオタイプを脱ぎ捨てた、時代を射抜いた言葉たちが出てきます。この辺のセンスは素敵だなあ、と感じました。
そう、ものすごく何か、ってわけじゃないんだけど、
確実に大切な部分をコンコン当ててくる、
そのささやかながら実はすごい、ていうことをやってるんだと思います。
こんな映画が作れる人になれたらきっと幸せだろうと思います。
何を感じて、この映画を録ろうと思ったんだろう。
デトロイト、ニューヨーク、オークランド
筋がない。家族の話。
「母親は物事の暗部に向き合わなければならない」
光がキラキラしている。
スナップショットのワンシーンになりそうなカットが多い。
モノクロの方が風景がくっきりはっきり見える
写真学校に入って1年間はモノクロ写真しかやっていなかったことを思い出した。
「カモンカモン」は「先へ先へ」
日本語だと来い来いって意味かと思う。
なぜ録音が好きか。
平凡なものを永遠にするってクール。
ひねくれた子供がそうする理由。
家族というきれない関係性のわずらわしさ
アメリカは、怒鳴ることが暴力だという認識がちゃんとある。
独り身のおじさん。子育てマジ大変。
取材してたから、
子供のことをわかっているつもりだった。
良い子じゃないと愛されない。
愛情を試している。
子供は環境を選べない。
放り出されたら生きていけない。
「全人生の妙なクソ人生」
割とまともな人間だからこそ悩む。
自然の中にいるときはカラーが良いと感じる
感情をコントロールすることが美徳とされる現代。
自分が感じているものを意識すること。
子供達は今の私たちより世界に対応してできるように進化していく。
「ふざけよう
コンマ
そうできてきるときは
ピリオド」
洗練されたハートフルストーリー
ウェルメイドな作品。ホアキン・フェニックスと子役の演技はとても良くて、安心して観ていられる。洗練されたアートシネマが好きな人ならみんな満足すると思う。
主人公のジョニーは、ラジオ局につとめるジャーナリストで、全米を移動しながら子どもたちに取材する仕事だ。彼の妹は結婚しているが、夫がメンタルを病んでいて、入院させるためにごたごたしている。そのため、彼女の息子であるジェシーの面倒を見てほしいと頼まれる。
ジョニーは仕事があるので、結局ジェシーをつれて旅を続けることになる。
ジェシーは賢いのだが、エキセントリックなところがある。親元を離れてすごす不安もあり、ジョニーは手を焼くことになる。しかし、そんな生活の中でも、徐々にふたりは信頼を構築していく。
たくさんの問いがあり、たくさんの答えがある。
ウイリアム・サローヤンの「パパ・ユーアクレイジー」を思い出した。
父と子の物語で、ふたりがたくさんのことについて話す。
こういう、普段あまり親しくないおとなと子どもが、ふたりだけの時間を過ごす中でたくさんの会話をして、互いを理解していく、という物語はたくさんある。ただ、2021年という時代にあらためて、コミュニケーションの大切さを問いかけたのはタイミングがよい。製作と配給はA24。この会社の企画力のうまさにはいつも感心する。
A24の作品は売れるアートシネマだ。
spotifyのヒットチャートに名を連ねているアーティストの楽曲に似た感覚がある。それは洗練されていて、軽やかで、かつ個性もある。ただ、魂を削るような凄みのある作品はチャートには出てこない。たくさんの人に聴いてもらえる曲なのだ。結構どぎつい歌詞の曲もあるのだが、それでもおしゃれになっている。
A24も空気感が似ている。丁寧に作られた作品であるのは否定しないのだけど、やっぱり、マーケティングとかビジネス的な計算といったものが先だっているように思う。「ミッドサマー」も強烈ではあるのだけれど、がっつりと心をつかまれるような凄みはない。
それでも、ホアキン・フェニックスは名優と言ってもよい俳優だし、子役もうまかった。映像もめちゃくちゃきれいで、センスの塊みたいな作品だった。でも感動はしなくて、映画の世界のトレンドをチェックしている感覚なのだ。
時代の空気感というものがあって、クリエイティブをやるのであれば、常にそれを追いかけていかなくてはならない。その空気感に対して、どんな問いを立ててなにを生み出していくのか、という作業が自分のクリエイティブになる。そういう意味ではA24のやっていることは正しいし、spotifyのランキングの上位にいるアーティストも時代の空気をうまくつかんでいるのだ。ただ、マーケティングと計算に基づいたプレゼンテーションみたいな作品は、とてもきれいで、たくさんの人が受け入れるのだろうけれど、やっぱり、リミッターが壊れたような凄みのある作品にはならないと思う。
そういう風に考えると、スコセッシとか、デヴィッド・フィンチャーみたいな人たちはやっぱりすごいんだと思う。
モノクロの世界
久しぶりにモノクロの映画を観た
こんなにも世の中色に溢れていたのかと、再認識
そういえば最近では夢もカラーだ
映画は
なぜ仲違いして気まずいのに兄に子供を預けたのか。本当はあの時は言いすぎた謝りたいと思っていたのか
ジェシーの父親のことを大丈夫だなんて嘘ついたのはなぜなのか。嘘はいつかバレるし、バレたらもっと傷つくのに
ジェシーはわがまま放題で母と叔父は振り回されてイライラする。もっとビシッと言って、その後優しく抱きしめればいいのに
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