「ブラジルのそのまんま・・・なのでしょうね。」私はヴァレンティナ バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
ブラジルのそのまんま・・・なのでしょうね。
ブラジルはジェンダー関連の法の整備は先進的だがLGBTQの市民レベルの理解は追いついていないそうで、トランスジェンダーの82%が中途退学そして70%だったかな?は35歳までに亡くなるのだそうです。亡くなられる理由は自死の割合も多いのでは?と思えてしまうほど、本作で描かれるトランスジェンダーの「生きにくさ」は半端ないです。
主演の方は演技未経験と思えないリアリティある演技でした。インタビュー記事を後で読んだら自身がトランスジェンダーで現実と重なる部分が多かったからだそうですね。いやそれにしても、彼女を見続けるのが辛くなるほどの演技であり物語でした。きっと母親への気持ちとか仲間への親愛の感情などはすごく重なるんでしょうね(ご本人の実母はお亡くなりになっているそうですが)
なぜこれほど寛容になれないのかなぁ?同じ人間なのに。宗教的な理由もあるのかなぁ?とすら思ってしまうほどに彼女に向けられる感情は「嫌悪」なんですよね。差別というよりも憎しみにも似た感情をぶつける世間。本当に何がそんなに許せないのか?が僕自身もわからないです。でも、それがブラジルって国なんでしょうね(地域差はあるにせよ)もちろん、日本を含めて至る所にあるんでしょうね、僕自身が知らないだけで。
でもね、そんな世界を作っている方々は気づくべきなんですよ。自分の知っている範囲や世界を頑なに守り、その中だけで力を誇示することの滑稽さを。自分の知っている世界でしか生きられない弱さは客観的にすごく格好悪いってことを。
大事なことは「男らしさ」「女らしさ」ではなく「自分らしく生きる」ってこととそれが叶う「環境をつくる」ってことなんだと思うんですよね。
ラストの彼女の表情はきっと「願い」なんだろうな。
とても見るのが辛いですが、多くの方に見ていただきた作品です。