「感想と考えたこと」ケイコ 目を澄ませて ティム2さんの映画レビュー(感想・評価)
感想と考えたこと
はじめ生活音がよく聞こえると思った。
ジムの練習の音がクリアに聞こえて、心地良いリズムを刻んでる。
そこに字幕が入って主人公には聞こえてないのがわかる。
ボクサーの練習は自分を追い詰めて孤独な闘いってイメージがあるけど、音がないのを想像すると余計に孤独を感じそうだと勝手に考えて、でも最初から知らなければそんなこと考えないよな、と思い直したり…。
騒がしいくらいの練習音の中、トレーナーの動きに目を凝らして黙々と練習する主人公。
私は、自分の引き出しのすぐ手の届くところにある言い方で「目を凝らす」って使うけど、タイトルにある「目を澄まして」がほんとにしっくりくる。
言葉ではなく動きだけなので観客も目を澄ます。
心地良いリズムのミット打ち。
カメラが他を向いてて、映ってなくても音が聞こえる。聞いてるだけで練習を感じられた。
しゃべらないので彼女のキャラクターがわからないが、大変そうながら楽しんでいて、よかった。
暗いシーンがある。
生活音とかほんと音がよく聞こえて、asmrのように私は音を楽しんでた。
聞いてると音で何してるかわかるから。
観客はとことん音で感じる。音の情報量が多いのを感じた。
普段の生活で耳からの情報はとても多くて、でも自覚できてなかった。
目を澄まして映画を見てたら、画面に映ってる所と映ってないけど音だけでわかるたくさんのことがあり、耳を澄ます映画。
でも、周りの人の表情や態度とか彼女の感情がわかるのは映像からだから、やっぱ目で見るのも大事。
会長は目が悪くてほぼ見えてない。
音に集中してみるとこは会長と同じ感じ方になって、同じように耳を澄ましてた。
コンビニや警察のシーンをみて、ままならないコミュニケーション、先にコミュニケーションを諦めたのは健常者か彼女か、と考えた。
他のジムに通ってた頃は干されてたようだし、新しいジム探しでも苦労する。
悩みとか、内省だけで消化するのは苦しくて大変で話せばいいのにって思うけど、彼女に限らず話さない人は多い。
私自身も話すの難しい。でも人には話した方がいいとアドバイスしたくなる。
私は臆病からで、でも彼女は違って、解決しないしと言っていた。我慢して諦めてるように感じた。
弟が言う、自分の中で抱えられる「強さ」はそうなってるだけで、ほんとは話すことができない、だったのかな。
彼女の気持ちは周りの人に伝わってなくて気づいてもらえなくて、もどかしくなった。
終盤の練習ノートで、真顔の彼女が日頃思ってたことがわかって良い。全然伝わってないよ。
最後の方笑顔が増えてきて、コミュニケーション取っててうれしくなった。
相手がいるから試合ができる。
ボクシングには練習の相手がいる。
抱えてる気持ちを発散できる。
発散する以上に意味があって、言葉で言えなくても、ボクシングはコミュニケーションの場だったのかな。
会長とのトレーニングは楽しそうだった。