劇場公開日 2023年4月28日

「一級のエンターテイメント作品」劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 KeithKHさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5一級のエンターテイメント作品

2023年6月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

コロナ禍の最中、2021年7月期に平均視聴率13.6%、最終話は何と19.5%を記録した、今やTBS看板枠となった日曜夜9時に放送された、人気ドラマの映画化が本作です。

タイトルからも見て取れる、医療ドラマと事故パニックドラマが融合された枠組み通りに、オープニングの巻頭、突然に飛行機の爆発炎上現場が現れ、主人公たちの緊急救命医療チームの人命救助活動が短いカットを小刻みにつないで速いテンポで映し出されます。二次爆発が刻々と迫る状況下、切羽詰まる危機感と漲る緊迫感に観客は晒され、いきなり心を鷲掴みされます。
事故で災禍に見舞われる人々を超人的技術とチームワークで助けていく救命医療チーム(Mobile Emergency Room)は、典型的ヒーローとして描かれます。そしてヒーロードラマを際立たせるのは、常に悪党であり、本作でも次々とヒーローを脅かす悪党どもを登場させてパニックの中の窮地に追い込み、どん底まで追い込んで、観客にもうだめだと思わせた時に起死回生の救世主が現れ、どんでん返しでヒーローが再起し、ハッピーエンドに結ばれる。
少し笑わせて、時に泣かせて、そして殆ど10分ごとに手に汗握らせる、本作は、将にエンターテイメントの王道をなぞるストーリーで、観終えた後に満足感と幸福感に包んでくれます。

悪役が徹底的にヒーローを貶め蔑ろにする度合いと憎々しさが巧妙で激越なほどヒーローは引き立ち、ヒーローが奈落に落とされる度合いが深ければ深いほど、其処からの巻き返しが観客の共感と感動を呼び起こします。
ただ本作の最大の悪役・厚労大臣を演じた徳重聡は、それなりに熱演だが、残念ながらまだ軽妙すぎて嫌悪感を喚起する度合いは低いので、寧ろ滑稽さが湧いてきて、ヒーローチームへの全面的肩入れ感覚にまで至らないのは、残念に思います。

また人気テレビドラマの映画化ゆえに、テレビの方を知らない観客のために、これまでの経緯と主人公たちの人間関係を説明するシーンを挿入するのは已む無いですが、そのために観客は、その間は張り詰めていた緊張が中和されてしまい、気が削がれてしまうのも勿体ないように感じます。

ただ命を救うギリギリの現場を追う手持ちカメラの躍動感、そして臨場感と緊迫感と息詰まる迫力は、観客を自然にスクリーンに感情移入させ、128分間ずっと観客の目を惹き付けていくカメラワークとシナリオ展開は見事です。
一級のエンターテイメント作品といえると思います。

KeithKH