「「あなたは殺されます」」湖のランスロ imymayさんの映画レビュー(感想・評価)
「あなたは殺されます」
王への忠誠、仲間たちとの絆、騎士道精神、神への信仰、王妃への愛、すべてがなんだかうまく貫けないように描かれていたように思う、
ランスロと王妃の不義で、ランスロは王からの信頼を失う。任務を遂行できなくて騎士たちは連帯を失う。ランスロの不義に気づいた騎士がそれを利用して権力を得ようとする。ランスロは誤って信頼できる部下を殺してしまう。謀反を起こした騎士の討伐にランスロたちは向かうけれど、王はもはやランスロに期待などしていないし、ランスロたちは全滅してしまう。王妃への愛も最初は断ち切ろうとしたのにもかかわらず、結局断ち切れなくて、露見してしまい、国が滅ぶ原因になる。すべてが中途半端で、貫徹されず、満たされる者は誰もいない。完璧ではないところが、人間らしいのだけれど。
ランスロたちが全滅したから、きっと、王も王妃も殺されてしまったか、辱められているかどちらかの結末をむかえたのかもしれない、
全編を通じて、男(騎士)の象徴である甲冑が、からから、と音を立てているのが印象的だった、最後の場面では特に、その、からから、はあまりに空虚に響く。
その最後の場面では、ランスロは愛する王妃の名を口にして、仲間たちの死骸のうえに斃れる。斃れてしまえばもう、みんな甲冑を着た男たちで、区別はつかない。そこにはもう既に「個」「個人」「個性」は存在しなくて、王の単なる「駒」のひとつとして死んでいくように思えた。
血がたくさん溢れたり、首が飛んだり、みんな壮絶に死んでいく。なのに、ブレッソンが映画にすると静謐で淡々としている。いかにも騎士っぽい勇ましい音楽が流れるのだけれど、その淡々とした映像とはなんだかミスマッチに感じて、そこがまた、空虚さを増長させるようだった。