「忘れることはできないが、前に進むことはできる」ツユクサ bionさんの映画レビュー(感想・評価)
忘れることはできないが、前に進むことはできる
心の傷を負った人が、再生していく物語といえば、大事件を解決したり、厳しい試練を乗り越えたりと、ドラマチックな展開が多いが、『つゆくさ』では隕石にぶつかる程度のアクシデントしか起きない。
この作品に登場する人たちの喪失感を埋めていくプロセスは、身近な人たちが行なっている過程にとても近い。傷がカサブタで覆われ、何かの拍子にカサブタがはがれる。劇的な何かが起きるわけではない。
だからこそ、共感できる部分がいっぱいある。仕事に集中したり、気の合う人とおしゃべりをしたり、行きつけの店でくつろいだり。そんな物語を小林聡美、江口のりこ、松重豊らの演技達者が、コミカルに演じる。彼らの過去はさらりと触れられるが、そう簡単に癒えるような出来事でもない。忘れることもできないが、前に進むことはできる。そんな事を思う作品でございました。
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