「前向きに生きていきたい人たちに贈る「大人のおとぎ話」のような作品」ツユクサ 山田晶子さんの映画レビュー(感想・評価)
前向きに生きていきたい人たちに贈る「大人のおとぎ話」のような作品
私の中では小林聡美といえば、人気シリーズドラマ「やっぱり猫が好き」(1988~1991)における、とにかく明るい末っ子役で輝いていた。笑いの間や動きも抜群だった。
映画では『かもめ食堂』(2006)や『めがね』(2007)で、何気ない自然体の演技が必要な難しい役どころを演じ、独特な存在感のある代え難い役者となった。
本作『ツユクサ』では、人生の折り返し地点である50歳を目前にした主人公・芙美を演じている。
キャストはベテラン揃いなので、どんな映画なのか想像できずにいたが、意外と普遍的で、よくありそうな「大人の日常」を描いていた。
芙美は、ボディタオルを作る会社で働きながら一人暮らしをしており、同じ職場の直子(平岩紙)と妙子(江口のりこ)とのやりとりは見ていて微笑ましい。
ところが、そんなほんわかとした日常に、隕石が落ちてきて(隕石に遭遇する確率は1億分の1とのこと)、その破片が芙美の車にぶつかるという出来事が。面白いことに、彼女は動揺する様子もない。
やるべきことを毎日こなして普通に暮らしている芙美は、一見、感情の起伏が少ないように見えるが、親友(直子のひとり息子)とのやりとりでは、彼女らしい情熱が見え隠れする。
実は、アルコールを断つために会合に通っていたり、何気に謎めいた女性でもある。その謎も、温かいストーリーを通して徐々に明らかになっていく。
色々あっても、丁寧に生きる大切さと、前に進む元気を与えてくれる本作。
ちょっぴりコミカルで、じんわり心に沁みてくるベテラン俳優陣の味わい深い掛け合いも見所。
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