「邦画の“大好き”が全部詰まった映画」ツユクサ shironさんの映画レビュー(感想・評価)
邦画の“大好き”が全部詰まった映画
花の名前を教えてもらうと、その花を見る度にその人の事を思い出すそうな。
行き止まりに思えた道も、よく見回すと別の横道に繋がっている曲がり角だった。
そんな人生の2ターン目の戸惑いや喜びが、心にスッと入ってくる。
見事な脚本。素晴らしい演技。真摯な演出。
邦画の大好きなところを全部集めたような映画でした。
航平くんの元気な語り口が、映画のトーンを一段明るくしています。
てっきり、子供の目線から主人公の芙美を観察しているのかと思いましたが、ガッツリ物語の中に入り込んでます。
まさか初恋のくだりが、こんな風に影響してくるとは!
それで言うと、まさかインコがこんな風に影響してくるとは!笑
主人公の芙美を中心にはしていますが、芙美を取り巻く人々のドラマも描かれます。
最小限で無駄のない脚本が本当に素晴らしい。
そして、その最小限のエピソードの見えない部分…氷山の下に隠れている部分を最大限に膨らませて見せてくれる名優たち。
小林聡美さん、松重豊さん、平岩紙さん、江口のりこさん、渋川清彦さん。
ちょっとしたニュアンスに込められたユーモアとペーソスがたまりません。
子供の頃、50歳っておばあちゃんだと思っていました。
でも、人生100年の時代では折り返し地点にすぎない。
人生のどん底から少しずつ動き出した心が潤っていく。距離が縮まるトキメキや、誰かと寄り添う心地よさ。
いい歳の大人でもキュンキュンしちゃうんだなぁ。これが。
航平君と対に描かれる、人生2ターン目の初恋。
靴下を脱ぎ捨てるシーンに胸が詰まって泣けました。
私のレビューを読んで少しでも印象が変わってくれれば…
「イマイチだったけど、ちょっとは良いところもあったかも?」と思ってもらえたら、これ以上嬉しいことはありません。
自分自身の目で見て感じたことが全てなのだから、どんな映画でも見てみないことには始まらない。見て嫌いは良いけど見ず嫌いはやめよう。
ではなぜレビューを書いているのか?
私が大号泣した映画を「つまらない映画」と感じる人もいる。感じたことに正しいも間違いもないのだから、感想についてとやかく言う気はないのだけど、せっかく映画を見たのにガッカリした気分になるのはもったいない。
Mさん、コメントありがとうございます
これは私にとって本当に嬉しいお言葉です。
年に1〜2本しか映画を見られなかった頃「つまらない」「何も起きない映画」とのレビューを読んで、候補から外した映画があったのですが。10年後に観て大号泣。
あの時に見なかったことを心底後悔しました。
教訓:人のレビューなんて当てにならない。
小林聡美さんが好きで、楽しみにしてこの映画を見ました。が、残念ながら、私の心には届きませんでした。が、このレビューを読んで、また見てみようかな、と、いう記入なりました。
言葉の力って偉大ですね。
グレシャムの法則さん、コメントありがとうございます!
実は、クリント・イーストウッド監督が新作を撮るたびに一緒に観ていた相棒を亡くしまして。『クライマッチョ』を観ることができていません。観て報告した方が良い気もするけど、私だけで観るにはまだ辛すぎて。
でも、グレシャムの法則さんのコメントで、観たい気持ちが少し膨らみました。きっとそのうち観られる日も来るでしょう。