「オリジナルに対する敬意は感じるものの、オリジナルを超えようとする気概は感じられない」生きる LIVING tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
オリジナルに対する敬意は感じるものの、オリジナルを超えようとする気概は感じられない
黒澤明の「生きる」との一番の違いは、新人の市役所職員の視点が加わったところだろうか・・・
彼は、若い女性職員とともに、主人公を最も理解する人物として描かれるが、それだけでなく、主人公が彼に遺した手紙によって、この映画が伝えたかったことも分かるようになっているのである。
ただ、彼は、ほとんど、公園作りに情熱を燃やす主人公の姿しか見ていないはずなので、もっと、お役所仕事にどっぷりとはまっていた「ゾンビ」の頃の姿も見せるようにするべきだったのではないかとも思う。
その他の部分は、舞台がロンドンに変わっただけで、時代背景も、市役所等の設定も、途中から回想になる構成も、極めてオリジナルに忠実に作られているという印象を受けた。
これは、「生きる」に敬意を表しているということなのだろうが、その一方で、はじめからオリジナルを超えるつもりはなく、超えようとする気概もなかったのだとも思えてしまう。
いかにも英国風の端正で格式のある映画にはなっているものの、さっぱりとした薄味の印象で物足りなさが残るのは、そうした気概が感じられないからなのかもしれない。
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tomatoさんのコメント
2023年4月18日
おっしゃるとおりですね。
もしかしたら、「生きる」を、端正で格式のある映画に作り直したかったのかもしれないけれど、その分、インパクトが失われてしまったのは残念です。