「ジェントルマンの傘と帽子」生きる LIVING talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
ジェントルマンの傘と帽子
クリックして本文を読む
とても美しく上品なイギリス映画だった。冷たい雨、雪、でもその後に必ず訪れる美しい春。喧騒のロンドン。ウォーター・ルー駅。男性は帽子に傘。上司の葬儀の帰りの電車のコンパートメントはファースト・クラス。役所でも貴族が力を持っている階級社会。
そういうイギリス社会で、単調な仕事をなるべくさぼり、未決の書類の山を脇に案件たらい回しの役所に勤める役人を私はうまく捉えられなかった。要するにミスター・ウィリアムズはかっこ良すぎて言葉づかいも十分にジェントルマンだった。情けない感じもなく、彼の同僚や部下も十分にジェントルマンだった。
美しいイギリス映画であること、ミス・ハリスが若さと生命力に溢れていること、音楽が効果的であること、それは文句なくとても良かった。ただ黒澤の「生きる」を見ていないにも関わらず、志村喬、ブランコ、ゴンドラの歌の三つが私の頭にこびりついて追い払うことができなかった。大戦勝利国のイギリスと敗戦国の日本、戦後ようやく5年と少しの両国。その背景と「生きる」を切り離して普遍的なこととして見ることが私にはできなかった。
コメントする
ニコさんのコメント
2023年4月1日
コメントありがとうございます。
志村喬、ブランコ、ゴンドラの唄の3点セットは確かにインパクト大ですね。見たらますます脳裏に刻まれると思います。
大戦の勝利国か敗戦国かの違い、という視点にはっとさせられました。確かに、それぞれの作品の空気感の違いを生む要素になっている気がします。