「私的観点は公式記録になるのか?」東京2020オリンピック SIDE:A コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
私的観点は公式記録になるのか?
間違いなく河瀬監督の作品でした。
タイトルが『河瀬監督の見た東京五輪2020』だったらわかるのですが、「公式記録」「ドキュメンタリー」を求めた自分にはダメでした。
私的な視点でまとめた30分くらいのBSテレビ番組シリーズ4〜6回の総集編みたいでした。
体制にも競技にもアスリートにも観客にも、阿(おもね)らず、寄り添ってもおらず。
いや、最後まで寄り添っていたのは「監督自身」にではないのか?
その奥底にあるのは主観。
監督が興味のある特定の競技や選手だけ偏って抜き出し、「私が見たこと」「私が感じたこと」を全面に出しているように見えました。
それぞれのエピソードが、事象を恣意的かつ断片的に切り取って演出した「物語」に仕上げていたように見え、ドキュメンタリーとは程遠いとしか思えませんでした。
五輪を肯定してるわけではないのでプロパガンダにもなっておらず、監督が美化した世界が繰り広げられているので、感動ポルノに近い印象でした。
そもそもが、監督が見つめているはずの選手の発言や決意の瞬間が「いつ」なのかが、映画を観ている私にはわかりませんでした。
日時クレジットもほとんどないのだ。
だから、「世間との関わり」の中の時系列がよくわからない。
コロナ禍のどのタイミング?
紛争の起きた時からどのくらい経ったの?
試合まで何日?
そんな作りだから、オリンピックの全体像がわからない。
どんな競技があり、どんな進行だったのか?
いつ何が起きたの?
海外の映画賞とかでは「私の視点」を評価される作りなのかもしれませんが、記録映画の監督として相応しかったのか、大いに疑問が残りました。
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