「世界観も構成も、全てが美しい。」すずめの戸締まり TF.movさんの映画レビュー(感想・評価)
世界観も構成も、全てが美しい。
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「迷い込んだその先には、全部の時間が溶け合ったような、空があった−」
予告編の最後、印象的な言葉だ。夜空には数多の星が浮かぶ。ある星の光は何万年もかけて地球に届き、ある星は数年で届く。そんな別々の時代に存在する光が、同時に見えるのが夜の星空だ。この言葉には、そんな意味が込められているのだと思う。
常世と現世。それを繋ぐ扉。災害が起きる理由。さすがとしか言いようのない、新海誠の世界観だ。突飛な設定も、どこか説得力があり、観る者をその世界にいざなう。すべての時間が溶け合う常世で、過去のすずめと現在のすずめが出会う。彼女は、自身の過去の、微かな記憶に触れる。とても感動的ではないか。「行ってきます。」の一言で、母親のいない世界を受け入れられない過去の私と、死者の世界である常世に生きるであろう彼女の母親に別れを告げる。たった一言に、彼女の思いが込められているのだ。本当に美しい。
本作において象徴的に描かれる扉と、すべての家にある普遍的な扉。あらゆる扉が、「行ってきます」と「おかえり」を持っていて、そんな数多の思いが、本作の「扉」というアイコンに重厚感を与えている。どうしてこれほどまでに美しくまとめられるのか、本当に凄い。
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