劇場公開日 2022年11月11日

「「スゴイ映画」でなく「ヤバイ映画」。信者が居たからこそ公開できた新海誠作品……」すずめの戸締まり ヨヨ23さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「スゴイ映画」でなく「ヤバイ映画」。信者が居たからこそ公開できた新海誠作品……

2022年11月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

皮肉とか否定的な意味での「信者」ではありません。と言いますのも……

……本作映画、公式からアナウンスされていた通りに一部、というか随所に例の地震災害を思わせる描写があります。
むしろその「災害」こそ本題とばかりにがっつり物語に関わってきます。

多くの人が心に傷を負ったデリケートな事象だけに、下手の発言を一つでも打てば炎上必須。最悪作品が創れなくなる可能性まであり得る非常に危険な本題です。
実際、この映画が公開された直後も「トラウマが呼び起こされた」といった感想ツイートが数多く見られました。

思うに、「君に名は」「天気の子」の名声があった新海誠監督で、映画の内容を好意的に受け止めることができるファン(信者)も多かった。だからこそ公開できた作品なのではないでしょうか。
どれだけ物語の内容が良かろうとも、人気を得られていない他の人だと所謂「不謹慎厨」の声が大きくなり、テーマの内容だけで賛否の声で炎上してしまっていた気がします。

恋愛要素である「鈴芽(スズメ)「草太」はちょっと微妙な感じです。
もちろん映画を通して描かれる恋愛模様は面白いのですが、ドラマチックさでは「君の名は」「天気の子」が圧倒的で、それらに比べるとちぐはぐしている印象があり見劣りすると言わざるを得ないと思います。それでも面白いのですけれども!

恋愛要素が大きかった「君の名は」「天気の子」から、災害要素や主人公の成長、そして観客へのメッセージに重きを置いたのが本作、と言えばよいでしょうか。
これだけ話題になっていますが、一般向けではありません。
ハートフルな万人受けしていたを過去作を期待して見に行くとハートフルボッコにされます。

私はそういった災害に合ったことが無い人間でしたので、映画の中身は楽しめつつも、上映中ずっと顔の引きつっていた、という奇妙な体験をしました。
そして私が心を抉られたのは人間関係の黒い部分です。それでも物語の序盤や主人公の成長を覚えていたので向き合えましたが……視た瞬間は結構辛かったです。

少なくとも鑑賞後のテンションは下がります。
いろいろ考えることが多くて口数が減る、といった意味でテンションが下がります。
重さと温かさが混在した、ヤバい映画です。

ヨヨ23