「ようやく距離を置けた今だからこそ」すずめの戸締まり N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
ようやく距離を置けた今だからこそ
ネタバレを食らう前に急いで鑑賞。
日本神話系ファンタジーかつ、あいかわらず現実との絡め方も絶妙な新海ワールドだった。
「戸締り」設定が面白い。
ただ物語のあらすじそのものは、さほど目新しい所もなく典型といえよう。
それでも注目すべきなのは今、この時期にこのテーマを鑑賞することの意味にあると思える。
この作品には当時、直後すぎて不可能だったことが、
いくらも経ったことで振り返ることのできるだけの距離を得、
扱われるに至っている。
本作に心揺さぶられるのは、
「ようやく」その領域に触れることができたという思いからで
それはまさに「今」という時代を切り取っているに他ならない。
だからといって覚える感動は、当時を知っている人だけかと問えば
立場、年代を選ぶことはないはずだ。
むしろいずれは「あの頃の記録」として、
多くが普遍的な1本と知る事になるだろうと考える。
忘れてならない物事なら、生み出された本作の意義、役割もまた大きい。
その他、監督が日々気づき、思うところが、この作品には織り込まれているという。
編み上げられた本作は、今を生きる監督の視線に寄り添うもので、
その唯一無二の視点こそ作家性と呼ぶにふさわしい。
一見するとティーンズ向け、ファンタジーアニメだが、
いち文芸作品としても成り立っているなと鑑賞した。
今もどこかで鎮めているのかもしれない。
想像を広げることは楽しいし、思えばそんな「今」がかけがえない物だとも感じ取れる。
そして何より万が一にも上映中に地震が来たら、
映画のリアリティー百万馬力じゃね?
と鑑賞中、不謹慎ながらわくわくしつつ観た本作だった。
それにしても椅子が獅子奮迅する作画、恐れ入った。
また似て非なるモノだと思うが、「ドライブマイカー」とダブってる?
と思ったことも記録しておく。
(あ、ここの評論にもう書いてあった:追記)