「日本の各地を悼む、良質なロードムービー」すずめの戸締まり きょんさんの映画レビュー(感想・評価)
日本の各地を悼む、良質なロードムービー
映画を見終わったばかりでぼうっとしてあまり言葉になりませんが、なんとか書き残してみます。
新海誠監督作品は「君の名は。」「秒速5センチメートル」がすごく好きでした。
その後期待して見た「天気の子」が私的にはちっともハマらず、「今回はどっちかなぁ」と多少ヒヤヒヤしながら公開を心待ちにしていました。
直前にAmazon Primeで公開された冒頭10数分間の動画を拝見し「めちゃくちゃおもしろそう!」と期待して映画館へ。結果、すごく良かったです。
まず、映像が美しい!! 日本各地を旅したような気持ちになれる美しい風景の数々だけでも、この作品を見てよかったと思えます。
主題歌の十明さんの声が印象的。劇伴も映像を引き立てていて素晴らしい。
過去作品ほどではないですが映像と音楽もマッチしています(過去作よりもミュージックビデオ感が薄れているので、ある意味良かったとも思います)
キャラもいい。ダイジンがかわいいけど小憎らしくて、タカタカ!といい音を立てて高速で走る椅子もかわいい。
各土地で出会う人々もイキイキとして、その土地で生活している感があります。
すずめの声の役者さん、とてもいい声ですね。演技も上手いし、わざとらしくない声がいい!(ナンバMG5の妹役の方ですよね?)
終盤で草太が「この命はそのうちなくなる、かりそめのものとは知っている。けれどまだ生きたい」というセリフで涙が溢れました。
人の命は、本当にはかない。あの震災のような災害や最近の疫病、戦争のようなものがあると改めて、日常は当たり前のものではないのだ、私たちの命は一時的なものなのだと思い知らされます。
パンフレットで監督も書かれていましたが、これはすずめが過去の自分を救う物語なんですね。
「君の名は」の瀧くんのような存在に会えなくても、誰もが自分で自分を救うことはできる。
人は必ず死を迎えます。かりそめの命とは知っている。
けれどそれを知りながら自暴自棄になるのではなく、すずめのように「あなたはちゃんと大きくなる。大丈夫」と過去の自分を救ってあげられる自分でありたいです。
確かに、地震警報のアラームや震災そのものにトラウマがある方は注意した方がいいとは思う。
ただ、それがあってもなお各地に悲しみがある日本だからこそ、観てほしい良質な映画だと思いました。