劇場公開日 2022年11月11日

「「金」になるアニメの見本」すずめの戸締まり ステンレスブルクさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「金」になるアニメの見本

2022年11月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 話の内容については他の著名なレビュアーさんに譲るとして「商業的視点」と「アニメ産業」から見るとこの作品

 大成功です。ジブリが自滅したアニメ業界では太陽的存在です。

 まず、東北地方太平洋沖地震 をストーリーの中に組み込むことで話題性を生んでいます。また、主人公のトラウマにすることで年配、大人の共感性・興味度をあげています。卑怯ですが、下手くそな芸能人を声優にするよりはマシですね。

 『リアリティを犠牲にしても不愉快な所をカットする』『気持ちのいい所を定期的に素早く出す』を徹底している

 ・主人公含め、周りは自己犠牲・他者を思いやる善人しか出てきません。あのクソ猫も弱った自分の代わりに すずめたち に扉を封印してもらうように誘導してた(あと 狂言まわし )
 ・自己紹介の前から事件がスタートする(まずは観客を引き込む)
 ・曲も大人なしめで万人受けする選曲(年配には昭和の曲で配慮だ!)
 ・叔母と主人公の対立は25秒で終了!すぐに和解!
 ・新海誠ブランドの美術は欠かさない
 ・旅をすることでご当地巡りをして、背景をコロコロ変えて飽きさせない(いろんな自治体から地元を舞台に!と依頼されたのを逆手にとった形ですね)
 ・カメラワークが迫力ある(神戸の観覧車の場面は良いですね)
 ・新海誠の「あ・・・うん・・・」なフェチズムが薄まっている。しかし、真面目な すずめ には所々、色気を感じる(演出)

 と「老人から大人、子供」が幅広く80点で楽しめるように配慮されている作品です。これってすごいことですよ?子供向け作品(ディズニー)と違って、方向性のバラバラの人たちが大体満足できるんですから(そのせいで後味がうすい、という弊害を生んでいますが)。 『君の名は』『すずめの戸締まり』は日本アニメ史上で教科書的に見本にされる(模倣される)でしょう。

蛇足ですが
すずめの戸締まりのヒットはアニメに新しい「投資金」を呼び込み業界の活性化に繋がると思います。アニメ文化が大好きな者としてありがたいですね。

ステンレスブルク