「フィクションとリアルの狭間を描く対厄災映画」すずめの戸締まり Y Kさんの映画レビュー(感想・評価)
フィクションとリアルの狭間を描く対厄災映画
新海作品は、『秒速5センチメートル』から全作観ている程度のライトファンです。
感想
売れ込みの“新海誠監督集大成にして最高傑作“ とまではいなくても、新海監督のメッセージ性を最も感じる“傑作“世界系 ディザスター×ガールミーツボーイ×ロードムービーとなっていて率直に感動しました。
・物語構成
物語としては、女子高生のすずめが閉じ子である青年草太と共にネコ型のキーアイテムダイジンを追って、日本中の扉を閉じながら厄災を未然に防ぐという物語。
過去作とは異なり、今作はロードムービーである為、説明は必要最低限でハイテンポに次々と場所移動して、出会う人々に励まされながらダイジンの捕獲、扉の閉扉をしていきます。
一見単調に見えるかもしれませんが、ガールミーツボーイとしての愛情を育む重要なパートで、アクションシーンも多いので楽しくみる事ができました。ダイジン、椅子のメインキャラクター達が、終始可愛く癒されました。
・災害という宿命
そして、メインイベントである3.11との真正面対決です。SF展開からの、まさかのリアルとの融合です。今を生きる日本人誰しもが抱える悲しみの権化とのまさかの度直球対決には複雑な心境を持ちました。被災者であるすずめが、過去の苦しみを受け入れ、成長して幼少のすずめに希望を持たせて励みます。最高です‼︎災害大国で生きる我々日本人に新海監督が一つの解答を示すラストは涙無しには見る事ができませんでした。
・過去作との類似点
集大成的要素として、災害、年齢差のある恋愛模様劇、楽曲の使い方、駅のホームからの電車、美しい背景描写などの要素があり、安定した深海節に浸ることができました。
・音楽
昨今の新海作品では当たり前となっていた曲とクライマックスを融合させるMV風の演出が今回は殆どありませんでした。
この選択が、今作のメッセージ性一本勝負の大人向け作品として見事に昇華させていて素晴らしいと感じました。
総評
新海誠監督作品では、『君の名は。』の次に好きな作品(※1位は『言の葉の庭』。)。
被災者ではない為、被災者がどの様に災害描写を受け取るのかが不安ではあるが、個人的には前向きに生きようと励ませるポジティブなメッセージ性を受け取った。
素直に感動できた傑作だった。